足回りがヘタる兆候は?
クルマのサスペンションは実に複雑で、隅々まで考えられた構造となっている。例えば、本格的なラジコンカーなどは実車同様のサスペンション構造を採用しているが、実車では構造自体は同じでも細かい部分の作りは異なる。
軽量なラジコンは、走行中に路面から受ける衝撃が少なく、なおかつ乗員がいないため、走行に支障がなければ衝撃を吸収しなくても支障ないからだ。
しかし、実車ではバネとダンパーだけでなく、様々な部分が機能することで走行中の衝撃を吸収している。
その代表的なものがブッシュとアッパーマウントだろう。ブッシュとは軸受け部分(人でいうと関節部分)に組み込まれた補強パーツで衝撃を1ヵ所に集中させずに軸受け部分全体で受け止めるようにする部品だ。
平滑性の高いサーキットを走るレーシングカーでは動きの正確性を高めるためにメタルブッシュやピロボールを使うが、量産車ではここにゴムブッシュを採用し衝撃吸収性を高めているのだ。
しかしタイヤ同様ゴムブッシュは劣化するから、長年の使用で衝撃吸収性は低下して、変形したり硬化することで衝撃や異音を発生する原因にある。
走行中、路面からの衝撃を受けた時にゴツンという異音がしたり、ゴトゴトと、以前より路面からの衝撃が伝わってくると感じるようになったら、それは足回りがヘタってきている、部品の寿命が近づいた兆候だと思っていい。
それを早く気付ければ、早めのメンテナンスで解消できるので、結果としてクルマの寿命を延ばすことにもつながる。
どこを見れば足回りがヘタっているかわかる?
足回りのヘタリをオーナーが自分で見て判断することは難しい。ダンパーからオイルが漏れていれば(それだけで車検はNG)交換の必要があると分かるが、それ以外に見て分かるのはアッパーマウントやゴムブッシュの表面に亀裂が入っているくらいで、しかも内部にまでヒビが進行してしまっているかは判断しづらい。
ゴムが硬化してしまっていても見た目には分からない。ゴムブッシュが割れたり、変形してしまっているようなら、交換時期だがクルマをリフトアップして点検しないとそれも見つけられない。
やはり重要なのは異音と衝撃だ。特定の状況の時だけ異音が出るような状況なら、足回りの劣化やヘタリを見つけられる。
例えば、片側のサスペンションが動いた時だけコトコト、ガタガタ音がするようなら、スタビリンクのボールジョイントか、アッパーマウントがダメになっている場合がある。
確かめる方法としては、普段より強めのブレーキを掛けた時にノーズダイブが大きかったり、その後の揺れ戻しが大きかったりする場合はダンパーが抜けてきている証拠だ。
走行中の振動で常にユラユラと落ち着かない場合も、ダンパーのヘタリが原因であることが多い。
ブレーキを強めにかけると異音がするのなら、足回りのボールジョイントやブッシュを疑った方がいい。
走行中にステアリングにコツコツと衝撃が伝わる、舵を切った時にコキンッと音と衝撃が来るような場合は、ステアリングのタイロッドエンドにガタが出ているかもしれない。
自分のクルマはずっと乗り続けているから、徐々にヘタっていくので気付きにくい。そんな時には同型車の別なクルマに試乗してみるのも手だ。
走行距離が異なるなど、違うコンディションのクルマを運転、あるいは助手席に同乗してみれば、自分のクルマと比べて足回りがしっかりしているか、フワフワ、ガタガタして頼りないか分かるハズだ。同じ車種のオーナー同士で試乗しあってみるのもいいだろう。
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