■クルマ偏差値の高い欧州 意外に譲り合いが定着した米国
前述のとおり、ぼくは80年台に初めて欧州をドライブして感動したのだが、高速道路のスムーズさ以上にビックラこいたのが地方の一般道(フランスでいうところのルート・ナシオナル)のベースの速さだ。
村落周辺は速度規制があるが、田舎道になるとほとんどオートルートと同じ。いちおう100km/hの規制はあるが、爺さん婆さんを含めてみんな全開で飛ばしている。
まぁ、全開といってもシトローエン2CVやルノー4だから大したことはないのだが、それでも農家のオバさん駆るルノー4を仕留めるには、こちらはコーナー手前でかなりのハードブレーキングが必要といった状況。こういう、ある種の”クルマ偏差値”の高さみたいなものは、たぶん今でも欧州人にはとてもかなわない。
というか、日本では交通マナーが向上するのと比例して「クルマで危ないことをするのは悪」というコンセンサスが強固になった感じ。たまに欧州を走ると、昔どおりみんな飛ばしているなーと思うけど、日本はめっきりみんな安全運転になった印象がある。
クルマ好きにはちょっと寂しい部分もあるんだけど、それがやっぱり日本の交通マナーの特徴なのかもしれません。
ところが、そんな「安全第一」の日本から海外へ行くと、国や地域によって交通マナーやローカルルールは独特なものがある。
たとえば、最近アメリカのフリーウェイを走って顕著に感じるのは、交通の密度が高いうえに平均速度が速いこと。
昔の55マイル(約89km/h)制限時代は、片側6車線くらいのバカ広い道路にびっしりクルマがひしめいて、それがダラダラ流れているというイメージだったのだが、今じゃクルマがびっしりはそのままで流れが80マイル近くに上昇している。
2019年の夏、LA(ロサンゼルス)からソルトレイクまで800マイルをドライブしたんだけど、夜のドライブなんか慣れないとクルマ好きでも尻込みするくらいだし、雨でも降ろうものならちょっと恐怖を感じるというのが正直なところなのだ。
それでも、どんなにクルマがびっしり詰まっていてもウインカーで合図すれば必ず入れてくれるところとか、交差点では笑顔で譲ってくれるところなど、アメリカならではのよきマナーは健在で、それがじつに気持ちいい。日本にときどき現れる「合流で絶対に譲らないマン」みたいな人は、ぼくはアメリカでは見たことないんだけど、だからこそスムーズに流れてるんでしょうね。
■独特な交通事情を抱える新興国 その実情はなかなかのカオス
さて、欧米圏は日本人がレンタカーでドライブする機会も多いけど、アジア圏に目を転じると自分でハンドルを握るのはちょっと手ごわい。
ぼくの経験した範囲では、香港とシンガポールはかなりマシで、その次が中国本土、タイ、マレーシア。ベトナム、インドネシアあたりからかなりカオスになってきて、インドがその極め付けという感じだ。
もう数年以上前だけど、仕事のためインドでハンドルを握ったことがあるのだが、日本人の常識をいったん忘れて心を鬼にしないとインドではドライブできない。まず必用なのは、とにかくクラクションを鳴らしてズンズン鼻を突っ込んで行くこと。それは相手が歩行者だろうと同じで、軽く人に当たって押しのけるくらいの根性が必要なのだ。
2020年2月に久しぶりにデリーに行ったのだが、インドのカオスは健在だった。
その時はほぼタクシー移動だったけれど、高速道路では3車線道路に横5台くらいがデフォルト。まぁ、ご存知のとおりインドはコンパクトなクルマが多いからなんとかなるのかもしれないが、タクシーの後席から眺めているとまるでレースをやってるんじゃないかという錯覚に陥るほど、常にサイド・バイ・サイドで抜きつ抜かれつしている。
まぁ、こういう「現地ならではの交通事情」みたいなものは先進国にもあって、有名なパリ凱旋門を周回する巨大ラウンドアバウトなんかが典型。意地を張っていらぬ摩擦を生じさせたり、モタモタして流れを乱したりするクルマが圧倒的に少ない(ように見える)から、一見カオスのような交通状況がなんとかなっているわけだ。
そこへいくと、日本の交通状況というのはじつに平和そのもの。みなさんも、チャンスがあったらぜひ海外ドライブを体験されることをオススメいたします。
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