新型コロナ禍による外出自粛で、国内の道路では交通量が大きく減少していたが、現在は緊急事態宣言が解除されたことで以前のような状態に戻りつつある。
現在の日本では道路交通法の改正によって、あおり運転に対する厳罰化を図るなど、交通マナー問題で激論が交わされている。しかし、海外に目を向けるとどうなのか? ドイツのアウトバーンでは必ず速いクルマに譲るという話も聞くが、それは本当なのか? そのほかの国ではどうなのか?
今回は、海外モーターショーや取材でいろいろな国をまわっている自動車評論家の鈴木直也氏に、ヨーロッパ、アメリカ、新興国と大きく3つに分けた交通事情について考察してもらう。
文/鈴木直也
写真/Adobe Stock(Imaging L@Adobe Stock)
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■日本で白熱する交通マナー論争 海外をただ真似ればいいというものでもない
あおり運転が社会問題化した際、あおられる側にも問題があるのでは、という問題提起があった。
たしかに、制限速度の問題はあるにせよ、追い越し車線を延々と占拠して走行するクルマは迷惑だし、それがあおり運転を誘発しているという状況はままある。法で定められたルールと同じくらい、交通マナーも大事なんじゃないか、そんな意見にも一理ある。
一方、そういう議論が始まると、必ず「そこへゆくとヨーロッパでは……」という”出羽守”が現れる。
日本人の素朴なイメージとして、高速道路の本場たるアウトバーンあたりでは、追い越し車線をタラタラ走ってるようなマナーの悪い奴は皆無で、クルマの能力に応じてスムーズな交通環境が実現しているという幻想があるようだ。
しかし、この点についてぼくは少しばかり懐疑的だ。
たしかに、欧州の交通事情はクルマ好きにとっては天国だ。ぼくが初めてヨーロッパをドライブしたのは1980年代なかばのことだったが、パリを午後に出発してドイツとの国境の町ミュールーズまでの500km、まったく自然体でドライブして楽に3時間を切ったのには感動した。速度規制の厳しくなった今日でも、欧州には速いクルマの能力が活かせる環境がある。
でも、最近思うのは「それは道路が空いてるから可能なのでは?」という交通量の問題だ。
アウトバーンやオートルートは夢のように走りやすいのは事実だが、と同時にいつ行っても東名や首都高に比べたら夢のように空いてる。この人口密度なら、追い越しが終わったクルマは速やかに走行車線に戻って、自然に後続に道を開けるし。鈍感なクルマでも遠方から軽くパッシングで警告すれば気づいてどいてくれる。
マナーがいいといえばもちろんそうなのだが、余裕で譲り合える程度の交通量というのがポイントのような気がするのだ。
このぼくの持論に確信を深めたのが、先日来のコロナ騒動による外出自粛だ。
実は、万やむを得ぬ急用で緊急事態宣言下で、劇的に交通量が減った高速道路を何回か利用したのだが、全体に流れの速度が速くなっているうえに、追い越し車線を占拠するようなクルマが極めて少ない。結果として、まるでヨーロッパの高速道路みたいに、気持ちよくスピーディに移動できたのだ。
ぼくの実感としては、昭和の頃はマナーもへったくれもない時代だったけれど、平成の20年で高速マナーはかなり改善し、21世紀になってからの日本は交通マナーでは世界トップレベルに達したと思っているんだけどいかがだろう?
ここまでの話は一般的な高速道路マナーについての考察だったが、それとはべつに世界の国や地域には独特な交通ローカルルールみたいなものが存在するのが面白い点だ。
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