フェアレディZがなぜスポーツカー苦境の時代でも愛されるのか?

■経営危機でも潰えなかったその価値 生誕50周年を迎える名車に成長

 アメリカの景色を変えるほど売れたから、それまで北米で主役を張っていたヨーロッパ製のスポーツカーは脇役に追いやられ、いつの間にか姿を消した。Zの人気にあやかろうと、日本でもトヨタが刺客として「セリカXX(海外ではスープラ)」を送り込んだ。マツダもロータリーエンジン搭載の「RX-7」を投入する。

 迎え撃つフェアレディZは、1978年8月に初のモデルチェンジに踏み切り、「S130型 Z」を送り出した。2代目は日本では今一歩の評価だったが、41万台の生産を記録している。時代の先端を行く電子制御燃料噴射装置(EGI)を採用し、待望のターボ車やTバールーフも設定した。また、パワーステアリングを標準装備したから、女性にまでファン層を広げている。新たな神話を生み出したのが2代目のS130型 Zだ。

国産車で初めてTバールーフを採用した「S130型 Z」。セミガルウィングウィンドウ化されたモデルはテレビドラマ『西部警察』で活躍した

 1983年9月に登場した3代目の「Z31型 フェアレディZ」は、デザインだけでなくメカニズムも一新し、新しい魅力を持つスポーツカーに生まれ変わる。パワーユニットは新世代のVG系V型6気筒SOHCターボだ。走りにこだわるファンが多い日本市場にはパワフルな直6のDOHCターボというスペシャルユニットを投入し、Zマニアを喜ばせている。この3代目も30万台がオーナーの手に渡った。

 1989年7月に登場した「4代目フェアレディZ」、Z32型は、最初から3ナンバーのワイドボディとし、それまで影の薄い存在だった2by2も魅力的なボディをまとっている。300ZXが積むのは3LのVG30DE型 V型6気筒DOHCとDOHCターボだ。サスペンションは4輪とも革新的なマルチリンクで、4輪操舵のスーパーHICASも採用した。パフォーマンスもハンドリングも世界最高の仕上がりだ。

ロングノーズ、ショートデッキというZの伝統的なコンセプトを引き継ぎながら、空力性能を重視したデザインに変わった「Z31型」。内外装ともに一新された
1989~2000年という長期間にわたり生産された4代目「Z32型」。従来からの特徴であるロングノーズ、ショートデッキを改め、ワイド&ローというスポーツカーの基本的イメージを採用した

 4代目で、ポルシェコンプレックスから脱却したフェアレディZは孤高のスポーツカーに成長する。デザインもメカニズムも独自の世界観を持ち、快適性においてもライバルを寄せつけなかった。10年以上の長きにわたって第一線で活躍し、保険料が高騰した北米でも喝采を浴びている。1992年夏には爽快なコンバーチブルを復活させ、新たな魅力を提供した。

 だが、20世紀の末に日産は経営難に陥り、フランスのルノーに救済を仰いだ。ルノー傘下に収まり、フェアレディZの命運は30年で尽きたかと思われた。だが、カルロス・ゴーンCEOは「フェアレディZ」と「GT-R」の価値を認め、復活を約束する。カリスマ性と話題性があり、世界中に熱狂的なZマニアが多く存在することをルノーの首脳陣は知っていたのだ。

 21世紀のフェアレディZは、2002年夏に登場する。Z33型を名乗る「350ZX」が日産リバイバルプランの牽引車として新たなZ神話の幕開けを告げた。

 2003年にロードスターを追加し、2007年1月にはエンジンをパワフルなVQ35HR型に換装。そして2008年暮れに6代目の「Z34型 370ZX」がベールを脱いでいる。

 運動性能を高めるためにホイールベースを短くし、エンジンはスカイラインクーペと同じVVELを採用したVQ37VHR型だ。その後、10年以上にわたって販売を続け、コンバーチブルやNISMO仕様も投入。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売している。

日産リバイバルプランの象徴のひとつとして復活した「Z33型」。その復活は大きな話題を呼んだ
現行型となる「Z34型」。2019年夏には生誕50周年を記念して「50thアニバーサリー」を限定発売

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