■全体から漂う塊感が違う R32スカイラインGT-R(1989年)〈TEXT/小沢コージ〉
ホンダ「シビックSi」「初代インテグラタイプR」、人生で衝撃を受けた国産スポーツモデルは数あれどナンバーワンはやはり日産「R32スカイラインGT-R」だろう。とにかく見た目のドーピング感からして今までの国産箱車のレベルじゃない。もう毒っ気たっぷり。
乗ったらベースは2ドアスカイラインだろうし、延長線上かと思ったら全体から漂う塊感が違う。ステアリング剛性感、ペダル剛性感も違うし、ヤル気になればここまで別モノになれるのかと感心。
シートも今考えるとやや小ぶりな気もするが、無駄なクッションを省き、お尻に合わせた造形がピッタリハマり、吸い付くようなフィーリングがほかになくキモチいい。
なにより専用エンジンのRB26DETTだろう。たかが2.6Lの直6ツインターボだし、280psのスペックも今考えるとたいしたことないが、乗ったら凄かった。
サウンド、トルク感、ドラマチック性、高精度感、どれを取っても今まで味わったクルマ以上。冷静に考えると、今のBMW直6ツインターボのほうがよっぽど速いし、迫力もあるはずだけど、当時は俺自身が若かった(笑)。今でも自分をあれほど興奮させてくれた国産スポーツモデルはないと思う。
■別格的に美しかった FD3S型RX-7(1991年)〈TEXT/岡本幸一郎〉
「俺の……」ということで真っ先に思い浮かんだのは、自分にとって元愛車でもあり、ガチで気に入ってしまいそれから3台も乗り継いだ、マツダ「RX-7(FD3S)」だ。
もともとリトラ&ハッチバックが好きで、トヨタ「セリカXX」「AE86トレノ」、日産「180SX」、トヨタ「A70スープラ」あたりを乗り継いだんだけど、FD3Sだけ別格的に美しかったと思っている。
スポーツモデルというのは、まず見た目が命だと思うが、あのなまめかしい曲面の表現は見事だ。それほど大きくないのに、すごく存在感があるのもデザインの妙に違いない。
グッと低いシートポジションとタイトなコクピットも、いかにもピュアスポーツらしい。グニャグニャした形状の斬新なインパネも、ほかのスポーツモデルと一線を画していた。
そんなわけで、まず見た目に惹かれて買ったFD3Sだったけど、そこからハマったのは走りに魅せられたからだ。
名機 13B-REWの回転フィールと強烈な加速はいわずもがな。そしてちょっとスリリングだけど、あの切れ味鋭いハンドリングもひとたび味わうともう病みつき。これぞまさしく軽量なロータリーをフロントミッドに積んだ賜物。どこを走っても本当に楽しめた。
見ても乗っても最高にエキサイティングな、不世出のスポーティモデルに違いないといまでも思っている。
■日常の走りが面白い! 初代インサイト(1999年)〈TEXT/鈴木直也〉
2002〜2014年まで、12年にわたって所有したホンダ「初代インサイト」がマイベスト。どこに惚れ込んだかというと、もともと燃費スペシャルとして開発されたこのクルマが、走らせたらすっげぇ面白いライトウェイトスポーツだったから。
もとはといえば「話題のハイブリッド車というものに乗っとこう」という職業的な動機から購入したのですが、買ってみたらその軽快な走りにゾッコン。若いころ(1980年代)「アルピーヌA110」でエンスー生活を送っていた影響もあって、この小さくて軽いクーペに魅了されてしまったわけでございます。
さらに、インサイトとの生活が長く続いたのは、日常の走りにも飽きない面白さがあったから。
仕事柄箱根や御殿場によく出かけるんですが、ちょっとエコランを心掛ければ25〜27km/L程度の燃費を軽くマークします。こうなると、燃費を伸ばすことが面白くなってくるわけ。
性能の限界を攻めるのがスポーツカーの楽しみとするなら、コイツは燃費の限界に挑むエコスペシャル。ドライバーのアクションに正確に反応するクルマは、テーマは何であれ走らせて面白いってことに気づいたのです。
いまだに、売ったことをちょっぴり後悔しております。
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