PHVが主役となる可能性は?
しかし、率直なところ、たとえ30年後であっても、PHVがハイブリッド車から主役の座を奪うことはない、と筆者は考えている。
その理由は「価格」と「車重」だ。下記の表に、現在日本で販売中の国産PHVと、そのベースとなったモデルのスペックを載せたので、参照してほしい。
PHVの価格の高さは、ご覧のとおりだ。RAV4 PHVはハイブリッドに対して約110万円のアップ、プリウスPHVはプリウスに対して約75万円のアップ、アウトランダーPHEVは約76万円のアップとなる。
その要因はもちろん、駆動用バッテリーやPHV専用パワートレインにある。リチウムイオンバッテリーの価格が大崩落でもしない限り、この価格差は埋まることはない。
現時点は、まだPHVが少なく、アーリーアダプターの方達を中心に、注目を集めてはいるが、これが落ち着いてしまえば、ハイブリッド車とは決して埋まらない価格の高さが、よりネックとなってくるはずだ。
そして、もっと問題なのがPHV化による車両重量の増加だ。RAV4 PHVはハイブリッドに対して210kgアップ、プリウスPHVはプリウスに対して160kgアップ、アウトランダーPHEVは280kg、と、PHVとなることで、とんでもなく重量が増えるのだ。
環境性能を考えれば、効率の良いパワートレインで、軽い車重のクルマを動かすのが適していることは、物理の初歩を学んだ方であればおわかりのはず。
そのため、どのメーカーもEV航続距離の長さや加速の良さといった「パフォーマンス」をアピールする。「最新のエコカー」であるプラインハイブリッドの存在を、否定しかねないからだ。
ハイブリッド車のバッテリー容量にしても、今よりも増えることは考えられるが、それらはすべて、車両価格と車両重量にも跳ね返ってくる。
そのため、環境性能を考慮すると、EV走行距離が延びるとはいえ、無下に容量アップはできない。
PHVの圧倒的な加速性能や、EV航続距離は確かに魅力的ではあるが、価格への跳ね返りが大きすぎる。
高額なPHVを買うよりも、そこそこのパフォーマンスだが環境コンシャスなハイブリッド車の方が、現実的には正しい選択といえないだろうか。
今後もハイブリッド車が主役の座を守り続け、PHVはハイブリッドに代わる存在にはなり切れないはずだ。
今後は、比較的廉価なクルマにはハイブリッドが、高価なクルマの一部にPHVが設定されていく、というのが、筆者の予想だ。
とにかくインフラの充実が必要
主役とまではいかないまでも、RAV4 PHVの登場、そして、このあと三菱&日産アライアンスから登場するであろうPHV(編注:日産エクストレイル/三菱アウトランダーに設定される見込み)を通して、日本市場でももう少しPHVが注目される存在になる可能性はある。
しかし、そのためには、より一層のインフラの充実が必要だ。最近、高速道路のPAやSAにある充電ステーションに、電動車が列をなしている光景をよく見るようになった。
充電ステーションが増えてきたとはいえ、一か所に2基あれば多い方である。フルEV車の場合、電力がないと死活問題となる。
PHVが国内で普及するためには、こうした充電設備のより一層の充実はもとより、現行の充電設備を充電速度が速い設備へ更新をしたり、また、急速充電時のバッテリー加熱を防ぐ温度調整機能なども、必要となるだろう。
コメント
コメントの使い方