レンタカーや社用車、友人のクルマなど、普段運転していないクルマを運転する際は、自分にとってベストなドライビングポジションをとるため、シートやステアリングホイール、ミラーの位置を調整する必要があります。
クルマや運転が好きな方は、正しいドライビングポジションをとるために、各部の調整をしっかりとされると思いますが、そんな方でも忘れがちなのが、ヘッドレストの調整です。中には、ヘッドレストを調節したことなんてない、というかたもいるのではないでしょうか。
ヘッドレストには、万が一のときに乗員の頭部を守る、という、とても重要な役目があります。ここで、ヘッドレストの役目を再認識し、クルマを運転する際には、自分の体に合った位置に設定されているか、いま一度確認しましょう。
文:吉川賢一
写真:HONDA、TOYOTA、MAZDA、DAIHATSU、Adobe Stock
ヘッドレストは「頭の休息」ではない
クルマのヘッドレストは、英語の「ヘッドレストレイント(head restraint)」を略したものであり、休憩を意味する「レスト(rest)」ではありません。
「restraint」は「拘束」という意味をもつ単語です。ヘッドレストは、追突事故など、予想外の加速度で、乗員の頭が揺すられた際、乗員の頭をむち打ち症から守る、という重要な任務のある装備なのです。枕ではありません。
追突されると、人間の体は前方へ投げ出されますが、頭部は重いため、身体より動きが遅れ、いわゆる「むち打ち」の状態となります。ヘッドレストは、頭部が後ろへ投げ出されるのを最小限に食い止めてくれるのです。
人間の頭部の重さは、体重の8~10%ほどと言われており、ボーリングの球でいうと11ポンドから13ポンドと、結構ずっしりくる重さです。そんな重い頭を、細い首で支えているわけですから、万が一を考え、首を守ることは、普段からしっかり意識しなくてはなりません。
ヘッドレストを正しく使うとこで、被害を最小限に
政府の統計データによると、昨年度の交通事故発生件数は、全国で38万1237件、そのうち、追突事故は12万6062件。なんと、交通事故の3件に1件は追突事故とのこと(政府統計ポータルサイト「e-Stat」 事故類型別交通事故件数による)。
追突事故などによって、むち打ち症になってしまうと、首の痛みや凝りだけでなく、めまい、目のかすみ、眼精疲労、吐き気、握力低下、手や指先の麻痺、等々、さまざまな身体的症状を引き起こしてしまうだけでなく、ひどい場合には、うつ症状などを誘発してしまうこともあり、回復までに相当な時間がかかってしまいます。
そうならないためにも、ヘッドレストは正しい位置に調整することが必要です。ヘッドレストの正しい位置は、後頭部の一番出っ張っている部分に、ヘッドレストの中心がくる高さです。前後にも調整できるタイプもありますので、より頭とヘッドレストが近くなるよう、調整しておきましょう。
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