■今のレクサスにこそISが必要だ
世界のプレミアムコンパクト全体を見渡しても、エントリーやコンパクトクラスは、FF車が主流だ。レクサスでも、FRセダン「GS」の守備をFFセダン「ES」がカバーしたように、FF化の流れも当然考えられる。
しかし、高級車の基本となるセダンこそ、エントリークラスが担う役目は大きい。メルセデスベンツやBMWもエントリーモデルをFF化し、エントリーセダンや4ドアクーペを備える一方で、伝統的な上級モデルの入り口となるCクラスや3シリーズは、未だFRレイアウトに固執する。
これはメーカー自身が、ヒエラルキーを含め、まだまだFRレイアウトの優位性が大きいと考えるからだ。“ジャーマン3”(ベンツ、BMW、アウディ)のひとつであるアウディは、FFベースを基本とするが、上級モデルでは縦置きレイアウトを採用する。
つまり、明確な差別化の一線が存在するのである。それゆえ、レクサスがプレミアムであるためには、対抗馬となるISの存在が不可欠なのだ。
■走りに重きを置くレクサスにとってISの存在は大きい
ISが受け継がれたもう一つの理由は、フラッグシップクーペLCに象徴させる新世代レクサスが、走りにも重点を置いたことが挙げられる。
今のレクサスならば、大型車でも走り良いモデルを生み出すことも容易だろう。しかし、純粋な走りの魅力を追求するならば、一体感や操る喜びを感じやすい小型車こそ有利だ。
走りの魅力を語りながら、それを訴求できるモデルがないというのは、全く説得力に欠けるではないか。
しかも、米国の高級車ユーザーにも、熱心なコンパクトセダンファンがいることは、米国発信で新型ISのワールドプレミアを実施したことからも明らかだ。
数字だけでなく、ISには、ブランドの未来を担う重要な役割があるのだ。恐らく、この新型ISの大掛かりな改良は、豊田章男社長の拘りだったのではないだろうか。
■次期型はどうなる? ISが目指す未来とは
オンライン発表会の内容からも、新型ISが単なる化粧直しではなく、現行型の完成形を目指して本気で開発を行ったことが伺える。
最大の目玉は、ニュルでの開発経験をフィードバックした新試験施設「トヨタテクニカルセンター下山」の新テストコース開発一号車にISを選んだことだろう。単に宣伝効果でいえば、オールニューモデルの方が最適といえる。
それならば、フルモデルチェンジだったのではとの声もあるだろうが、それはレクサス自身も感じているところだろう。なぜならば、トヨタのDNGAプラットフォームには、ISに最適といえるFRプラットフォームも持たないからだ。
姉妹車となるべき、マークXもリストラされてしまった今、ニーズの縮小するセダンに専用プラットフォームを用意するのは難しい。そこで大幅なブラッシュアップを決断したのだろう。
しかし、近い将来、少なくとも5年後あたりには、次のシフトがやってくる。それがFRとは限らないだろう。
近年、トヨタが4WD開発に注力していることからも、CTと基本を共有化した4WDスポーツセダンという可能性もあるだろうし、電動化戦略によりモーターを使った後輪駆動のEVに仕立ててくるかもしれない。
いずれにせよ、実用的なサイズであるISクラスのモデルが消滅することはないだろう。ただ、ISが最後のピュアFRスポーツセダンとなる可能性は充分にあるため、FRファンなら、今のうちに乗っておきたい一台だ。
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