各カテゴリーには「絶対王者」として君臨するクルマがある。総合力に優れ、販売も好調なパターンもあれば、販売台数は少なくとも、類まれなる性能や魅力を発揮して他車の追随を許さないというパターンもある。
下に挙げたのは現在「絶対王者」として君臨しているクルマたちだが、総合では及ばずとも、ピンポイントの部分でなら勝るライバルもいるのではないかというのが本企画の趣旨。自動車評論家 岡本幸一郎氏とともに、各カテゴリーの「ここなら勝てる!」クルマを探す!!
●2020年夏の絶対王者たち…アルファード/ヴェルファイア/ハリアー/ヤリス・フィット/RAV4/スイフトスポーツ/ロードスター/GT-R
【画像ギャラリー】総勢22台! 各カテゴリーの絶対王者と負けず劣らずの伏兵たちをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年9月のものです
文:岡本幸一郎/写真:ベストカー編集部ほか
初出:『ベストカー』 2020年10月10日号
■ミニバン絶対王者 トヨタ アルファード/ヴェルファイアに勝てるクルマは?

●ポイントは……
・SUVとの融合という独自の世界観
・アルファードを上回るコワモテ顔
シートアレンジの多彩さで凌駕するセレナというオチもアリだけど、それではつまらないと思うので、ここではぜひミニバン界で異彩を放つデリカD:5を取り上げたい。

独特のキャラクターが一部の層から熱烈に支持されて、独自の世界観を確立しているのがD:5の凄いところ。その愛されっぷりはハンパない。
お互いとやかく言われた顔のコワモテ度もD:5のほうが上回るし、インテリアの高級感も現行型では肉迫した。
あと、ぜひ知っておいてほしいのが「リブボーンフレーム」という環状骨格構造を採用していることだ。
これにより高い車体剛性を実現し、操縦安定性や衝突安全性に優れるほか、開発関係者いわく「ガケから落ちてもデリカなら助かる可能性が高い」のだ。
■シティ派SUV絶対王者 トヨタ ハリアーに勝てるクルマは?

●ポイントは……
・パワーユニットの種類と魅力
・ターボとハイブリッドの力強さ
見てのとおりデザイン優先なので、車内や荷室の広さは数値的には競合に対して見劣りする。とはいえそのあたりは承知の上でこうしているわけで、そこをとやかく言うのは適切でないし、実用上も充分な広さが確保されている。
そこで、肝心の走りでみていくと、やや弱いのがパワートレーンだ。例えば出来のよいディーゼルやパワフルなガソリンターボを選べるCX-5に比べると、ハリアーは少々物足りなさを覚える。

さらにCX-5は独自のGVCや先進的なAWDも効いてハンドリングの実力も侮れない。
TNGAを得た新型ハリアーはそのあたりも互角かそれ以上ではあるが、CX-5もそんなデバイスを持っていることを忘れてはいけない。

あるいは、すっかり影の薄くなったCR-Vが実はかなりのものだ。
ガソリンターボ、ハイブリッドともハリアーをしのぐ力強さだし、走りの質感だって、CR-Vもこのクラスとしては望外なクォリティをいちはやく実現したことに驚かされたものだ。

加えて7人乗りの設定がある点も強み。北米や中国で大ヒットしたのも納得だ。
■コンパクトカー絶対王者 トヨタ ヤリス&ホンダ フィットに勝てるクルマは?


●ポイントは……
・市街地での乗り心地
・クラス世界王者の足回り
このクラスの各車はそれぞれ強みもあれば弱みもある。例えばノートにはe-POWERがあるし、マツダ2はディーゼルや高級な内装が選べるというわかりやすい特徴があるわけだが、そこでつっこむのも芸がない気がするので、少々違った視点で選んでみた。
まずは軽自動車だが価格が近いのでお許し願いたい、N-WGN。

この2台を相手にした時にどこが勝ってるかというと、それは乗り心地だ。
ヤリスもフィットも高速巡行やワインディングなどどんな道でもしっかり走れることを意図した結果、やや硬さを感じる。それはそれでいいのだが、市街地にかぎってはN-WGNはなんら気になるところがない。

逆に、欧州の郊外を模したテストコースでフィットとN-WGNを乗り比べた時にはフィットのほうが断然よかった。つまりそういうこと。
だから、あくまで市街地にかぎるけど、そこが抜群によいという話だ。
もう1台が、このクラス世界王者のポロだ。ヤリスもフィットも相当レベルアップしたとはいえ足回りは追いつけていない感あり。
電動パワステのフィールもポロが微妙に正確性や直進性で上回る。

■オフロード系SUV絶対王者 トヨタ RAV4に勝てるクルマは?

●ポイントは……
・シンメトリカルAWDのポテンシャル
・3列目シートの存在と利便性
フォレスターはスバルならではのシンメトリカルAWDが強み。パワートレーンを左右対称に配置したことで前後だけでなく左右のバランスに優れるのだが、これは条件が悪くなるほど効いてくる。

推測だが、RAV4でも充分とはいえ、ある程度の勾配があって路面の滑りやすい曲がりくねった道での走りやすさはフォレスターが上回るはずだ。
かたやエクストレイルも走りの実力はそれなりに高いが、RAV4が全体的にだいぶ上回り、プロパイロットも最新のトヨタセーフティセンスにはおよばない感あり。
一方、室内の利便性については、全長とホイールベースが長く3列シートの設定もあり、2列目のアレンジ性に優れ、よりアウトドアを意識した仕様のエクストレイルに分がある。

■コンパクトスポーツ絶対王者 スズキ スイフトスポーツに勝てるクルマは?

●ポイントは……
・エンジンもモーターも爽快で力強い
・後輪駆動ならではのトラクション
スイスポの命である“走り”の部分で一目置けるのが、ノートNISMO Sだ。乗り心地は硬めながら切れ味鋭いハンドリングを実現している点とエンジンに注目。

メカチューンを施した1.6L自然吸気の吹け上がりは痛快そのもの。あるいは“ひと踏み惚れ”でおなじみのe-POWERも選べて、これまたモーターならではのレスポンスと低速トルクの力強さには定評がある。
あるいは、ホットハッチではないけど、ぜひ挙げたいのがトゥインゴだ。RRレイアウトの採用は走りにも効いている。

あの軽快なハンドリングや、パワーをかけても横に逃げずしっかり前に進むトラクションはFFでは絶対に無理。トゥインゴをベースにチューニングしたらスイスポも目じゃない最高のホットハッチができる…!?
■ライトスポーツ絶対王者 マツダ ロードスターに勝てるクルマは?

●ポイントは……
・ミドシップの非日常性
・オープンなのに難易度が低い
多少は高い価格帯まで含めると海外にはスペックで上回る車種がいくつもあるわけだが、ロードスターの場合、そこは全然問題じゃないように思う。
そこで原点に立ち返り、クルマとしての本質の部分でどうなのか、S660とコペンという身近な2台の軽スポーツにあらためて目を向けてみることにした。
S660は非日常性を感じさせる点で突出している。それはやはりミドシップであることに尽きる。背後から聞こえるエンジンサウンドや自分を中心に曲がる操縦感覚はS660ならではである。

スタイリングも普通じゃないが、これもミドシップなればこそこうなった。さらには面倒な幌の着脱やほとんど荷物の収納スペースがないことも、非日常性を感じさせる点ではむしろ一役買っている。

一方、コペンは逆にとっつきやすさが強みだ。3台のなかでは車高やヒップポイントが高めでいくぶん乗り降りしやすく、運転席からの眺めも乗用車に近い。
アクティブトップを出した状態なら荷室も広く使いやすい。それでいてオープンカーの醍醐味である開放感でも上回っている。

■スーパースポーツ絶対王者 日産 GT-Rに勝てるクルマは?

●ポイントは……
・大排気量V8自然吸気の吹け上がり
・エキサイティングなドライブ感覚
NSXは価格が高すぎるので省くとして、GT-Rのメインの価格帯である1000万円台前半で考えた時に、これは! と思ったのがRC Fだ。

エンジンのパワフルさではGT-Rが圧倒的だけど、V8自然吸気の吹け上がりは絶品! TVDが効いてハンドリングもGT-Rを上回る。
ほかではZもスープラもGT-R相手では力不足だし、海外勢を見渡しても、GT-Rの価格帯だとポルシェも大したことないし、新型コルベットはまだ乗ってないしと思っていたら、ちょっと高いけどAMG GTがあるじゃないか!

とにかくこのクルマ、ドライブフィールが超刺激的! 全車500psオーバーだから文句なく速いし、フロントミドシップで回頭性も抜群だ。運転して感じるエキサイティングさではGT-Rをしのぐ。
【番外コラム】唯一無二! どんな相手にも敗けない絶対王者は?
絶対王者のなかには「相手が見つからない」ほど独自性を発揮しているクルマもある。その象徴がジムニー&ジムニーシエラ。

この企画に出てほしかったのだが、「ここなら!」だけでも勝てそうなクルマが見当たらないので断念。競合車がないのだからしかたない。ジムニー最強。
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