■7代目 プロトタイプ(2021年?~)
前述のように、初代S30を強く彷彿とさせるデザインだが、プラットフォームはZ34ベース(たぶん)。Z34は、シュートホイールベースでオーバーハングを切り詰めた結果、伸びやかどころかコロンと丸まったようなノーズを持つが、新型はフロントオーバーハングを大幅に伸ばすことで、ロングノーズ感を復活させている。
ただ、直6ではなくV6搭載のキャブフォワードルックがベースだけに、ロングノーズ化には限界があり、初代Z信奉者に言わせれば、中途半端かもしれない。
ボンネットのパワーバルジや、滑らかに流れ落ちるルーフラインは、初代のイメージをそのまま踏襲。長方形のグリルも同様だが、初代にあったメッキバンパーがないため、四角い口が丸出しに。ヘッドライトは初代の丸形をイメージさせる瞳型で、フロントフェイスにはそのほか何も要素がなく、極めてシンプルだ。
また、日産デザインを統括するアルフォンソ・アルバイザ氏によれば、リヤデザインは、「S30やZ32型などいくつかの歴代Zが持つテールランプからインスピレーションを得て現代流にアレンジ」とのこと。
確かにテールランプの形状はZ32に似ているが、サイドに回り込んでいる点は異なる。また、ディフューザー的な形状がテール中央部までせりあがっているため、テールの切り落とし面の上下幅が狭く、後ろ姿にはフェアレディZ感がやや希薄だ。
個人的には、スピードへの情熱が消えた現代において、スポーツカーのデザインは懐古的であることが必須と考えている。もちろん昔の形まま出すわけにはいかないが、新型Zのデザインは、もう一歩初代に近づけて欲しかった、とは思う。特にリヤスタイルは、インパクトもZ感もやや弱い。
ただ、全体の方向性としては、「初代のモダン化」である新型のデザインには、100%賛成だ。
■このデザインを、故・前澤義雄氏が見たらどう言うだろう?
前澤さんは、自身がチーフを務めたZ32に関してすら、「従来のZに縛られすぎた」と述べているし、Z33は「基本が近代的な借り物で、そこに古典的フォルムを乗せた。どうやっても完璧にはできない」。Z34に散りばめられた初代のイメージについても、「未だにそんなものに頼っているようじゃダメだ」と一刀両断していた。
つまり、前澤さんが生きていれば、新型を一目見るなり、「論外」とコテンパンにしただろう。そして、肯定派の私と真っ向対立の水かけ論になっただろう。それをやりたかった……。
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