■歩行者も緊急自動車が接近したら譲るのは義務
そして、残るのは歩行者の問題だ。歩行者の場合も緊急自動車が交差点に接近したら進路を譲るのは、マナーではなく法律上でも義務と言える。
クルマのように免許制度はないし、罰金や反則金のような制度もないから罪には問われない、と思っているのであれば、少々甘い。パトカーだけでなく、消防車や救急車に乗車しているのは公務員であり、その業務を妨害するような行為があれば、公務執行妨害罪に問われる可能性があるからだ。
法律は「知らなかった」では済まされない、許されない。ドライバーは免許を取得する時に学科試験があるため、道交法を勉強するが、免許を持っていない人は法学部でなければ、なかなか法律を勉強する機会(必要性?)はない。
そのため法律に無知で、歩行者は道路交通では何も縛られない最強の存在と勘違いしている人も少なくない。歩行者が優遇されるのは、交通事故に遭った際に弱者救済の考えからのことで、実際の道路交通でヒエラルキーのように歩行者が頂点に君臨している訳ではないのだ。
したがって事故を未然に防ぐ道交法の考えから言えば、歩行者も法律を遵守しなければならないのだが、学ぶ機会を与えられていないことに甘えて、つい自分ルールで判断してしまいがちになってしまうのではないだろうか。
足早に通り過ぎれば、「自分のあたりまでなら許されるだろう」なんて勝手な解釈をしたり、自分としては救急車を避けているつもりで急いで渡るという、救急車側から見れば確実に通行できると判断することが難しくなる、迷惑な存在でしかない。

もうひとつの問題は、その歩行者も日時が違えばドライバーである可能性も高い、ということだ。ドライバーである時には緊急自動車の接近を知れば左に寄って停車するものの、歩行者である時にはクルマが停車しても「オレは歩行者様だ!」と言わんばかりに、救急車よりも先に渡ろうとする。
そこまで強硬ではなくても、「クルマじゃないから、いいか?」みたいな気持ちで、足を止めることなく横断歩道を渡り切ってしまう人はいるだろう。
それは法律に縛られているという潜在意識から来る、せめてもの抵抗みたいなモノなのかもしれないが、それによって迷惑を被る搬送される急病人、怪我人のことをちょっと考えてみて欲しい。
歩行者について話を広げると、自転車専用道を堂々と歩き、周囲を確認せずに横断する歩行者、また広い歩道がありながらも「平らだから」という理由で車道の路肩をランニング、ウォーキングする(しかも黒づくめだったりする)歩行者も存在する。彼らは、自分だけがリスクを背負い、それに納得していればいいという考えなのだろうか。
何のために法律が存在するのかといえば、それは犯罪を取り締まるためではなく、国民が安全で快適に暮らせるためのルール。それを守るのは国民の義務であり、その上で権利を利用、主張すべきだろう。
緊急自動車に道を譲らないのは非国民だと思ってもいい。それくらい厳格に考えてもいいほど、これは深刻な問題だ。
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