日本市場を狙うワケ
彼らが日本市場を狙う理由は、日本市場において、クリーンディーゼルエンジンが欧州プレミアムメーカーの象徴として、「絶好のアイコン」となりうると考えたからだろう。
「欧州車がもつ余裕のある走りを実現する要素の一つはディーゼルエンジンだ、日本人にもこの良さを味わってほしい」、という意思が、ディーゼルモデル推しの現状から垣間見える。
確かに、昨今のディーゼルモデルに乗ると、めちゃくちゃよく走る。トルクが太いので走りやすく、シャーシも良いので直進安定性が高く、なおかつ排気量2.0リッタークラスでも20km/Lに近い燃費をたたき出す。アイドリング時の「ガラガラ」ノイズと、「ブルブル」振動さえ気にしなければ、まったく何の不満もない(筆者も欧州ディーゼル車を所有している)。
それに対して、トヨタ、日産、ホンダをはじめとする日本車メーカーでは、海外市場向けにクリーンディーゼルエンジンを開発してはいても、積極的に国内市場へ導入してこなかった。日本メーカーとしては、国内市場はあくまでガソリンハイブリッド、もしくはEVやPHEVなどの電動化へと進むストーリーでいたのだろう。
速度域も最高100km/hまでと低く、綺麗に舗装された極良路が多く、乗り心地やロードノイズなどの、快適性に敏感になりがちな日本人にとって、運転のしやすさは認めるが、ディーゼルエンジン特有の振動や音は我慢ならない、と判断してのことだ。
さらに、欧州メーカーとしては、これまで長年研究開発と投資をしてきたディーゼルエンジンを、何が何でも売り続けないとならないという事情もある。
新型エンジンの開発は、自動車開発の中でも、技術面だけでなく金額面のハードルも高く、そう簡単にはやり直しがきかない最重要なパーツだ。エンジンの研究開発にかかった費用だけでなく、量産に必要な設備投資など、ひとたびエンジンの仕様を決めたならば、数百億規模の予算が必要となり、10年、20年と作り続けないと、元がとれない。
国内メーカーのほうが上質
日本市場へのディーゼルモデルは確実に増えてきている。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのようなプレミアムメーカーをはじめ、フォルクスワーゲン、プジョー、シトロエン、ボルボなど、欧州主要自動車メーカーの日本市場ラインアップにディーゼルグレードがある。
昨今の輸入車全体に占めるディーゼルの割合は約30%にも及ぶそうで、たしかに、ディーゼルの「d」のエンブレムを付けた輸入車を、街中で見る機会が増えたのは間違いない。
だが、なんとなく、欧州市場で人気がなくなってきたディーゼルモデルを、脇が甘い日本市場に押し付けているようにも感じられるのは気のせいだろうか。このあたり、自動車メーカーのマーケティングの上手さも考えられる。
欧州メーカーのディーゼルエンジンは、はっきりいって煩いものが多い。対して、例えばマツダ3などへ搭載されているスカイアクティブDは、音と振動の対策が念入りに施されており、ディーゼルということをほとんど感じさせないほどの性能だ。
欧州系のディーゼル車が、すべてにおいて優れているわけではないことは、我々日本人もしっかりと理解しておくべきことだろう。
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