バイクは70歳から! 生きていることを実感するために走る、元内科医


■年齢に追いつかれたくない。だから頑張る

 「理系の方だからか、松本さんはまずとことん調べ上げるんです。バイクに関する知識量はものすごくて、すでに僕よりあるかもしれない(笑)。しかも持っている知識が的確で、どれも正しいんですよ。もともと物理学がお好きだったそうなので、すごく理知的に物事を捉えているんです」と青木さん。

 松本さんはCBR250RRについて、「非常に旋回性が高いバイク。電子制御スロットルのリアクションは実にリニアですね。反応が適切だから、ブリッピングしやすい。もっとも、クイックシフターのシフトダウンは優秀で、私より上手なぐらいですけどね(笑)」

 「スーパースポーツのスタイルをしていますが、そこは250cc並列2気筒。いくらでもアクセルを開けられます」とインプレッションを語る。モーターサイクルジャーナリスト顔負けの鋭さで、猛勉強の跡が窺える。

 「私が思うように体を動かせるのは、せいぜいあと10年でしょう。その間にやれるだけのことをやりたい」と、いくらか急いている節もある。

 サーキット走行中も、前を走る青木さんにグウッと接近するシーンが何度かあった。アクセルを開けたくて仕方がない気持ちがあふれているのだ。だが、青木さんはそれを抑える。ゆっくりと、じっくりと、本当に少しずつペースを上げていく。

 「いくら松本さんの知識が豊富でも、何しろ免許を取られたばかりですからね。バイクで走っている時間──経験値は圧倒的に少ないんです」と青木さん。

 「今はあまり考えすぎずに、少しでも多くバイクに触れて、慣れてもらう段階。スピードを出したい気持ちは分かりますが(笑)、僕と同じラインを通ってもらうことを意識してもらっています」

 バイクでサーキットを走るにあたって、走るべきラインをきちんと通ることは非常に重要だ。スリムなバイクに対してサーキットのコース幅はかなり広く見えるが、正しいラインは非常に狭い。

 しかも「ライン」という名称ではあっても、単純な2次元の線を指しているのではない。

 コーナー手前でブレーキをかけ始めること、コーナーに向けて車体を倒し込むこと、コーナー出口に向けて車体を起こしていくこと、そしてアクセルを開けることなど、さまざまな動作や操作が正しいタイミング、正しい量、正しい速度で遂行されなければ、正しいラインを通ることはできない。

 簡単なようで、簡単ではないのだ。

 実際、松本さんは、前を行く青木さんのラインを完璧にトレースはできていなかった。スピードを出すだけではなく、的確にスピードを落とすことも学んでいかなければならない。

 「頭の中ではうまく行ってるんだけど、現実には無理(笑)。難しいものですね。でも、易しいことならすぐに飽きてしまう。ライディングは難しくて奥深い。完成することがなさそうですよ、永遠に。だから楽しくて仕方がないんです」

 サーキットを走りながら、少しずつスピードを上げる。それにつれて、ブレーキをかけた時に体にかかる重みが増す。アドレナリンが噴出する。リスクが高まっていることも、当然、体で感じている。

 それをコントロールできた時、「生きている!」と実感できる。そして、残された時間が少しずつ減っていることも──。

 「体幹を中心に体を鍛えるトレーニングを重ねていますが、年齢との追いかけっこですよ。今はまだ年齢に負けていないけれど、いつか追い越される時が来るでしょう。その日を、1日でも遅らせたい」。

 年齢に抗いながら、若い心を保ち続けようとする松本さん。こういう熱い魂の持ち主のために、バイクという乗り物はある。

【画像ギャラリー】七十にして矩をこえずとはまさにこのこと! 生の実感を得るために、70歳の元内科医はバイクに跨った!!