厳しい燃費規制にどう対応? 直6エンジンとPHEVに一抹の不安も
英国はEUから離脱するとはいえ、EU域内で実施される二酸化炭素(CO2)排出量抑制の規制値はさらに厳しさを増す可能性がある。既存の95g/kmでもEVを視野に入れた車種構成でなければ難しい状況だ。
そこで欧州の自動車メーカーは、より大型で重量が重く燃費の悪いSUV(スポーツ多目的車)などからEV化を進めている。メルセデス・ベンツEQCや、アウディe‐tronなどがその例といえる。
カリフォルニア州で実施されているZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制は、年を追うごとにPHEVの比率を減らしEV比率を高め、本来のゼロエミッション車普及へ向かっている。
2020年に6%だったEV比率は、2025年には16%へ拡大されるのである。なおかつ直近の状況では、2035年には販売されるすべての車種を排出ガスゼロとすべきと州知事は語った。
マツダは2030年までにすべての車種に電動化技術を搭載するとしているが、ラージとスモールの商品に搭載される電動化の方向性には、細部で疑問が残るのである。
最も懸念されるのは、ラージ商品へのPHEVとマイルドハイブリッドという方向性と、直列6気筒エンジンの開発である。
マツダは、魂動デザインと独創的な商品企画によって、プレミアムな自動車メーカーになろうとしている様子がうかがえる。
実際、マツダ車を購入した消費者の満足度は高いはずだ。したがって直列6気筒エンジンを搭載することにより、またそれをPHEV化することによって、いっそう上質な上級車を創り上げようとしているのかもしれない。
しかし、直列6気筒やV型12気筒エンジンで英国を代表する高級車と知られてきたジャガーは、次期型XJ(最上級車種)をEVにするとしている。
考えてみれば、シルキー6(シックス)などと称賛されて来た直列6気筒やV型12気筒エンジンが目指したのは、大排気量による圧倒的出力と、振動の少ない滑らかな回転による伸びやかな加速である。巡行している際にも振動の少なさにより、静かで優雅な乗り味が得られる。
しかしそれは、ピストンが上下動するレシプロエンジンをいかにして上質にするかという目的で生まれた気筒配列であり、目指した性能は、モーターであれば策を講じなくてもおのずと備わっている。
かつてマツダがロータリーエンジンの実用化に精力を注ぎこんだのも、上下動するピストンではなく、回転式のローターによる出力と上質さの融合であったのではないか。
それであるなら、なにもレシプロエンジンの直列6気筒を新開発しなくても、EVにすれば事は簡単だ。
また、直列6気筒エンジンを縦置きに搭載するには変速機も新たに開発する必要が出る。それだけの投資をEV実現へ費やせば、固定費と原価低減を加速し、遅れている領域への投資や新たな領域への投資開始として見直された中期経営計画に貢献するのではないか。
ジャガーの決断は、重い決断であったかもしれない。だが、論理的には正当な結論といえる。それに対してマツダがなぜ、レシプロの直列6気筒エンジンを新開発しなければならないのか、理解に苦しむ。
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