ガソリン価格は今後上がるのか?
日本での石油価格の動きについて、さらに広い視点から見るために、石油関連業界紙である燃料油脂新聞社に問い合わせてみた。
すると、石油(原油)というものが相場商品であることを改めて思い返すことになった。
「原油価格は4~5円上がる可能性はあるが、日本でのガソリンの店頭販売価格は今後2円程度の上昇に留まるのではないか」とのことだが「楽観視はできない」というコメントも返ってきた。油断ならないところだ。
おさらいになるが、2019年末頃にはOPECプラスの協調減産やイラン産原油の禁輸措置を背景として、原油価格が1バレル50ドル台の高値水準に達するなど高値を示していた。
ところが、欧州で2月頃からイタリアから新型コロナウイルスの感染が広まると、経済の衰退が見え始めて石油のだぶつきが懸念されるようになり、ガソリンや航空機用燃料の需要が減ることで、原油価格が急激な落ち込みを見せ、国際的な原油相場は4月末から5月初旬には約20ドル台まで急落した。
その後はOPECプラスの5月以降の減産の影響もあって原油価格は落ち着きを取り戻して反騰、現在は40ドル台まで戻って50ドルに届こうかという“コロナ前”までの水準となっている。
いっぽうで、たとえば原油価格が今後50ドル以上まで上がれば、米国で生産されるシェールオイル(地下深くの地層の間に堆積した原油。特殊な設備により岩盤に高圧を加えて破砕、地中から回収する)との価格競争で不利になってしまう状況が生まれる可能性が出てくるからだ。
ガソリン価格は、幸運ともいえる原油価格の下落とコロナウイルス感染拡大の影響が重なり合って、影響が最小限に留まったといえる。
ライフラインとしての役割を考えれば当然と言えば当然。仕事で日々走らせている我々自動車のユーザーが、日頃一喜一憂しているガソリンの店頭販売価格が変化するイメージが強いために忘れがちだが、社会の生活基盤を支えるインフラとしての石油の価格が、コロナウイルス感染拡大の影響によって直接的に変わってしまうようでは社会経済全体がパニックに陥ってしまうから、大きな不安をもたらしてしまうよりはマシともいえる。
前述の燃料油脂新聞社に今後のガソリン価格はどうなるのか、聞いてみたところ、元来儲けの薄い商品(利益は130~140円の小売価格のうち、5~10円程度と言われている)だけあるためか、「そう簡単には値上げに踏み切ることもできないという要素がある」という。
このようにコロナ禍が続くなかで安定的な供給が確保され、ガソリンスタンドの儲けは“そこそこ”といった具合のようだが、生活での身近な不安材料として、この先ガソリンの市場価格が高値安定になってしまう可能性があるのはユーザーの立場としては少々心許ない。ガソリンスタンドの経営も心配だが、我々ユーザーの財布の紐は緩められないだろう。
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