■消えたのは必然?? ポルテ・スペイドを追いやった「後輩」たち
当初はまずまず堅調に売れていたはずの2代目ポルテおよび初代スペイドがあるときパッタリ売れなくなり、そして結局はモデル自体が消滅してしまった理由。
それは、ひとつには「より魅力的な競合」の誕生がありました。
2代目ポルテ/初代スペイドの登場(2012年)から約3年後にモデルチェンジしたスズキの3代目(先代)ソリオは、ポルテ/スペイドとおおむね同じようなサイズですが、普通の「後部両側スライドドア」を採用。
そしてソリオは走りもなかなか良好でしたから、まずは多くの潜在ユーザーがこちらに流れてしまいました。
そして2016年11月にはダイハツから、これまたポルテ/スペイドとおおむね同サイズなれど両側スライドドアを採用した「トール」が発売。
そのトールのOEM供給車である「トヨタ ルーミー」「トヨタ タンク」も、ポルテ/スペイドと同じトヨタブランドで販売されることになりました。
こうなるともう、意欲的ではあった「片側1枚の大型スライドドア」を採用したポルテ/スペイドにはほとんど出る幕がありません。
そして必然的に「存在意義がよくわからない人気薄モデル」へと転落していったのです。
もうひとつの理由が、2020年5月から始まったトヨタ販売店の統合整理と、トヨタが以前から推進している「車種の整理(削減)」です。
この整理と削減により、そこそこの売れ筋だったトヨタ タンク(ダイハツ トールのOEM版であり、トヨタ ルーミーの姉妹車)ですら生産終了となりましたので、もともとここ数年は圧倒的に人気薄だった2代目ポルテ/初代スペイドなどはひとたまりもないというか、「整理されて当然」だったわけです。
以上が2代目ポルテ/初代スペイドが生産終了となった基本的な理由ですが、それ以前の根本部分にある理由として筆者が思うのは、「新機軸が定番に勝つのはなかなか難しい」ということです。
2代目ポルテ/初代スペイドは、良かれと思って「片側だけに大きな1枚のスライドドアを付ける」という新機軸で勝負をかけました。
その新機軸は当初それなりに受け入れられましたが、似たようなサイズの「普通の後部両側スライドドア車」が登場すると、多くのユーザーは「やっぱりこっちのほうがいいよね」ということでそちらに流れ、左右非対称のポルテ/スペイドには見向きもしませんでした。
これには、「2代目ポルテ/初代スペイドは車としての出来が圧倒的に良いわけではなかったから」という理由もあるわけですが、結局は「多くの人は“普通”をもっとも好むから」というのが根本的な理屈です。
そういった「普通=既成概念」を打ち破る新機軸がたまに大ヒットすることで、自動車は進化していきます。
しかし売れる新機軸を打ち出すのは容易ではないため、進化はたまにしか起こらないのです。たいてい「普通(現状維持)」が勝つのです。
2代目トヨタ ポルテおよび初代スペイドには、世の多くの人々の「普通のスライドドアが好き」というマインドを打ち破るだけの力は、正直ありませんでした。
しかし打ち破ろうとしたその姿勢だけは、称賛に値するのではないかと思っています。
■トヨタ ポルテ主要諸元
・全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1690mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1160kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1496cc
・最高出力:109ps/4800rpm
・最大トルク:13.9kgm/4800rpm
・燃費:19.0km/L(JC08モード)
・価格:164万円(2012年式 Y)
コメント
コメントの使い方