日本もドイツのようなヒストリックナンバー制度を採用してくれないものか
取れるところから取っておこうという、もどかしい日本の自動車税制だが、世界各国の旧車の税制はどうなっているのか見ていこう。代表例として、日本とは明確な考え方の違いがあるドイツから取り上げる。
ドイツでは「オールドタイマー」と呼ばれる制度が施行され、税金や車検制度上の優遇処置が設定されている。
なかでも製造から30年以上経過した乗用車両については、「Hナンバー」と呼ばれる制度により優遇税制が受けられる。「H」とはドイツ語の“Historisch”、日本語では「歴史的」のHを意味する。
「Hナンバー」の取得には厳格な基準が設定されている。公道を安全に走行が可能であり、環境負荷を抑えるべく触媒を装着するなど、排ガスの抑制への対応が施され、シャシー/エンジンなど、車両各部のチェックを受けて条件をクリアする必要がある。
さらに、「Hナンバー」の取得には高いオリジナル状態を維持していることが要求される。
たとえば、どのような部品を使って修理したのかがわかる整備記録簿の提出が必須となり、塗装も極力純正塗料を使用したことが求められる。また最新のオーディオ類を装着するのも認められないなど、厳しいチェック基準を満たさなければならない。
このように、無改造のオリジナル状態を保ちつつ、文化的価値のあるモデルであることが認められると、車両ナンバーの末尾に「H」が付加された「Hナンバー」が与えられる。
「Hナンバー」を取得すれば、排気量にかかわらず、年間の自動車税が一律に約190ユーロ(1ユーロ:126円で換算して約2万4000円、2020年12月時点)に抑えられ、「Hナンバー」車両は都市ごとに設定されている環境規制にしばられることがない。
さらに「シーズンナンバー」という期間限定のヒストリックカー用ナンバーも用意され、年間の税金を12ヵ月で割り、使用月間分を掛けた額を支払うことで取得でき、「Hナンバー」と「シーズンナンバー」を組み合わせて、使用期間ぶんを税金として支払うこともできる。
ちなみに「Hナンバー」の保有台数が、2020年1月現在で50万台を突破して過去最高の保有台数を記録しているのは、いかにドイツ国民が古いクルマを愛しているかがわかる。
欧米のヒストリックカーの税制処置
ほかの欧州諸国での自動車税に目を転じると、英国では現行販売車両の自動車税の課税基準は、CO2排出量と使用燃料の種類に応じて設定され、CO2排出量が少ないほど税金は安く、排出量100g以下は免税となっている。
一方、初年登録から40年以上経過した自家用車両は自動車税および車検(車両登録)が免除となる。
フランスではCO2排出量により環境規制が厳しくなる傾向はあるとはいえ、自動車税に関しては、主に排気量を基準に課税する「課税馬力」を採用。基本的には車齢に関係なく課税され、ヒストリックカー(含むクラシックカー)のくくりは存在しない。
一方、新車に比べて旧い車両は登録時にかかる費用が安くなり、10年落ちの車両であれば新車の半額程度になるようだ。
2年に一度の車検が必要とされ、費用は新旧車ともに50ユーロ以下(約6300円)。25年以上前のクルマに対しては、保有台数が多ければ多いほど割安になる。またナンバープレートとは別に、フロントガラスに車検合格のステッカーを貼っておかなければならない。
ほかの欧州諸国でも、イタリアでは自動車税は燃費基準によって定められ、20年以上経過した車両は減税対象となり、30年以上で免除となるなど、総じて欧州では国によって違いはあれど、製造からおよそ20年以上経過した車両は、現状では自動車税が緩和される傾向にある。
一方、米国では1994年以降に義務付けられた環境保護庁(EPA)が定める排ガス規制が設定されているが、製造から21年以上経過した車両は対象外で、輸入車を含む米国内で販売される車両が対象となる。
アメリカは個々の州による規制もあり、独自の厳しい排ガス規制を実施していることで知られるカリフォルニア州でも、1975年以前に製造された車両は対象外となる。
アメリカには製造から25年以上経過した車両(こちらも輸入車を含むのは欧州や日本から持ち込まれる車両が多いためだろう)の保安基準に対する優遇制度、いわゆる「25年ルール」があり、細かいチェックが免除され、右ハンドル車もクラッシュテストなどなしに米国内で販売/登録が可能になる。
東京都でも1945(昭和20)年以前に製造された、いわゆる“クラシックカーは、所有者の申請により自動車税の減免が受けられる「ヴィンテージカー減免」を実施しているのだが、ドイツのヒストリックカーナンバー制度の規模とはほど遠い。
納期限までに申請することにより、自動車税「種別割」の重課分の減免を受けることができる。なお、ヴィンテージカーの自動車税の減免については年度ごとの申請の必要はないとのこと。
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