■トヨタ クラウン
初代クラウンの発売は1955年だ。トヨタにとって最初の量販乗用車で、国産初の量販高級車でもあった。当時の高級車市場は輸入車で占められていたが、クラウンをきっかけに日本車も参入を開始している。
クラウンは国内市場を活性化すべく誕生したから、その後も国内市場を大切に開発されている。
トヨタ車の海外生産比率は1990年代後半に60%、2000年代には70%、2010年に近付く頃には80%を超えて、セダンは次々と海外向けの商品に変わっていく。しかし、クラウンは、一部を海外で販売したものの、基本的には国内向けを貫く。
現行型のボディサイズは、以前のマジェスタと同等で全長は4910mmに達するが、全幅は1800mmに抑えた。この全長×全幅の比率が、道幅の狭い国内専用モデルの証になっている。
2020年5月以降は、トヨタの全店が全車を扱う体制に移行。クラウンの販路も広がったが、トヨタ店でアルファードやハリアーに乗り替えるユーザーも増えて、クラウンの売れ行きは下降した。
そのためにクラウンをSUV化する報道も聞かれるが、国内の道路環境に適した快適な乗り心地と静粛性は、セダンボディにより達成されたものだ。
低重心で、後席とトランクスペースの間に隔壁を設けた高剛性のセダンボディがなければ、日本を最優先させるクラウンの価値も得られない。この路線を追求しながら活路を見い出すことが、伝統を受け継ぐクラウンの生き方だ。セダンを諦めるのはまだ早い。
■日産 新型ノート
コンパクトカーは薄利多売の商品だが、軽自動車に比べて販売台数は少ない。そこで通常は国内と海外の両方で売られるが、新型ノートは今のところ国内専売だ。開発者は「海外にはマイクラやジュークがありノートは国内専売にした」という。
国内向けの特徴は、先代型に比べてホイールベース(前輪と後輪の間隔)を20mm、全長を55mm短く抑えたことだ。プラットフォームなどを共通化するルノー ルーテシアも同様に短く抑えたから、ノートのみの変更ではないが、開発者は「今までの全長は(4100mmだから3900mm台の)ライバル車よりも長かった。そこで新型は短く抑えた」とコメントしている。
新型のエンジンはe-POWERのみで、先代型と違って純ガソリンエンジンは用意されない。
開発者は「先代型の国内販売状況を見ると、e-POWERの比率が70%以上だったからノーマルエンジンは用意しなかった。また新型ではインパネ周辺の質感を高めた。同様の内装を低価格のノーマルエンジン車に採用することはコスト的に難しい。2種類のインパネを用意する必要も生じるからe-POWERのみにした」という。
ユーザーにとってノーマルエンジンの廃止はメリットではないが、国内専用車の事情を色濃く反映させている。
■スズキ 新型ソリオ
軽自動車を除くと、国内重視度の最も高い車種がソリオだ。
従来型を含めて、全幅はコンパクトカーの中でも特に狭い。開発者は「裏道でもスレ違いができるように全幅を抑えた」という。現行型は車内を広げる目的で全幅を20mm拡大したが、ドアミラーの両端で測った実質的な車幅は変えていない。最小回転半径も4.8mで、水平基調のボディは視界も良いから、混雑した日本の道路環境に最適だ。
全長と全幅は小さいが、全高が1700mmを超えるから後席を含めて車内は広い。後席を畳めば自転車も積める。スライドドアは、ミニバンから乗り替えたユーザーにとって馴染みやすい。
また基本的な機能はスペーシアのような背の高い軽自動車に準じるから、生活環境の変化で、小型車にアップサイジングするユーザーにも適する。新型では衝突被害軽減ブレーキなども進化させた。
このようにソリオは、国内向けのミニバンや軽自動車からの乗り替えにも適したコンパクトカーだ。スズキの軽自動車造りのノウハウも生かされている。従来型ソリオの後発商品として登場したルーミーも、この点に注目して開発され、国内市場向けの小型車になっている。
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