スズキといえば非常に販売戦略が巧い会社として知られている。ジムニーやスイフトなど低価格で実用性を兼ね備えた車種が多い。
しかしそんなスズキでもやや微妙な立ち位置になってしまったクルマもある。それがイグニスだ。過去のスズキの名車のデザインをオマージュしたデザイン、質実剛健なインテリアなど売れる素質はあった。
でもなぜかあまりパッとしないのが正直なところ。なぜイグニスは売れなくなってしまったのだろうか?
文/清水草一、写真/SUZUKI
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■おしゃれ感漂うイグニスの売れ行きは??
4年前、御殿場で開催された試乗会でイグニスと初対面した時は、「すばらしいデザインだ!」と感動した。その時私はサルバドール・ダリのコスプレをまとって臨んだが、イグニスのデザインはある意味芸術的だった。
ちょい、きかん気なフロントマスク、大地を踏ん張るリヤビュー、バランス抜群でいかにも走りそうなサイドビュー。しかもそこには、過去のスズキのデザインモチーフが散りばめられていた。どこか懐かしいのに、全体としては新しくてオシャレさんな、とっても秀逸なデザインだった。
インテリアは、まるでイタリアの小型車! 素材は高級じゃないけれどセンス抜群で、オシャレ文房具の風合いだ。エクステリアもインテリアも、とにかくセンスがスバラシイと感心した。
パワートレインは一種類。4気筒1.2リッターNAエンジンに、スズキ得意のマイルドハイブリッドを組み合わせ、ミッションはCVT。決してパワフルではないけれど、トルクがあってとっても乗りやすい。
足回りもしっかりしている。高速直進安定性が少し低めなのは、インドや日本などの低速交通を前提に開発されたせいかな、とは感じたが、日本で街乗り中心ならまったく問題なし! 総合的には、「これは国産のイタリアン・コンパクトカーだ!」と思ったものだ。
そんなイグニスだが、日本での販売は低迷した。初年度こそ24,261台を売り、販売ランキング28位と健闘したが、翌17年は11,264台と半分以下に下落。18年以後は販売ランキング50傑から落ち、昨年は年間で2600台ほどまで落ち込んでしまった。わずか4年で10分の1とは涙が出ます。
イグニスはとってもいいクルマだったのに、なぜメインストリームになれなかったのだろう?
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