8車種も販売終了! 国産セダンが衰退した理由と生き残るための秘策はあるか?

セダンの魅力を改めて見直すべき

30年以上にわたるスポーツセダンとしての歴史にピリオドを打ったレガシィB4(1989~2020年)。2009年発売された5代目からは全長が4700mmを上回り、北米市場を意識した大柄なサイズに生まれ変わった
30年以上にわたるスポーツセダンとしての歴史にピリオドを打ったレガシィB4(1989~2020年)。2009年発売された5代目からは全長が4700mmを上回り、北米市場を意識した大柄なサイズに生まれ変わった

 ほかのカテゴリーと違うセダンの魅力として、筆頭に挙げられるのは「安心と快適」だ。

 セダンの全高は大半の車種が1500mm以下だから、ミニバンやSUVに比べて重心も低い。後席とトランクスペースの間には隔壁や骨格があり、ボディ剛性も高めやすい。

 低重心と高剛性のボディは、走行安定性と乗り心地を向上させる上で有利だ。後席とトランクスペースの間に隔壁があるとノイズも伝えにくいから、静粛性も向上する。その結果、安心と快適を総合的に高められる。

 ただしメーカーや販売会社にとって、セダンの安心と快適を表現するのは難しい。直接的に訴求すると「ミニバンやSUVは、セダンに比べて危険で不快」という趣旨になるからだ。セダンの開発者は「自社でミニバンやSUVを手掛ける以上、セダンが安心で快適とは、言いたくても言えない」とコメントしている。

 そうなるとTVのCMでは、12代目のV36型スカイラインのように「クルマは移動するためだけの道具ではない」「クルマには人の心を動かす力がある」「日本のクルマにときめきが帰ってくる」といった表現になる。セダンの価値表現を運転の楽しさ、フォーマルな雰囲気といった情緒に求める。

 それでもセダンに「安心と快適」という特徴がある以上、あきらめるのは早い。特にクラウンは、ルーフの低い4ドアハードトップを含めて、セダンというカテゴリーだからこそ成立した商品だ。

2018年6月に発売された15代目クラウン。レクサスLSのGA-Lプラットフォーム(ナロー版)を採用。全長1800mm以下を維持するためにクラウンの専用プラットフォームを開発する動きがあったものの、その計画は凍結してしまった
2018年6月に発売された15代目クラウン。レクサスLSのGA-Lプラットフォーム(ナロー版)を採用。全長1800mm以下を維持するためにクラウンの専用プラットフォームを開発する動きがあったものの、その計画は凍結してしまった

 最近になってクラウンをSUV化する報道もあるが、以前のクラウンが備えていた柔軟な乗り心地と安定性の両立、車両に包まれるような独特の安心感は、セダンボディでなければ成立しない。

 ハリアーの上級に位置するSUVを開発して、クラウンの車名を与えることは可能だが、それはもはやクラウンではない。新しい上級SUVには、別の車名を与えたほうが効果的だ。クラウンでは、中途半端にセダン時代の記憶を引きずって逆効果になる。

 またクラウンをSUVで残すのは、矛盾した話でもある。トヨタはマークIIの後継となるマークXを廃止して、今後はコロナ&カリーナの後を引き継いだプレミオ&アリオンも終了させる。

 セダンの主力車種を次々と廃止したのに、クラウンだけは1955年に発売したトヨタの根幹に位置する車種だから特別扱いすることになり、違和感を伴う。

2020年11月11日、中日新聞が次期クラウンのSUV化を報じて話題になった(CGイラストはベストカーが製作したもの)
2020年11月11日、中日新聞が次期クラウンのSUV化を報じて話題になった(CGイラストはベストカーが製作したもの)

 クラウンをSUV化する背景には、販売の低迷があるが、そこには若返りを狙った現行型のクルマ作りも影響を与えた。外観はリアウインドウを寝かせた6ライトキャビンのファストバック風に刷新され、発売時点ではインパネの中央に液晶モニターを上下に2つ並べた。

 乗り心地は欧州車のように少し硬く、グレードについては伝統のロイヤルサルーンを廃止している。従来型に比べて、クルマ作りを大幅に刷新させた。

 しかも2020年5月以降は、全国に展開するトヨタの全店で、全車を購入可能にした。その結果、クラウンの専売ディーラーだったトヨタ店でも、アルファードやハリアーへの乗り替えが生じている。

 アルファードやハリアーをトヨペット店のみが販売していた時代には、トヨタ店はクラウンのユーザーをしっかりとガードしたが、全車を扱える体制になればクラウンからアルファードやハリアーへの乗り替えも生じる。

次ページは : セダンを復活させるには「安心と快適」を徹底的に追及すべき

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