8車種も販売終了! 国産セダンが衰退した理由と生き残るための秘策はあるか?

8車種も販売終了! 国産セダンが衰退した理由と生き残るための秘策はあるか?

 クルマにはさまざまなカテゴリーがあるが、最近になって車種数を急速に減らしているのがセダンだ。トヨタでは、2019年12月にマークX、2020年8月にレクサスGSを生産終了した。

 日産は2020年7月にティアナ、2020年9月にシルフィ、ホンダは2020年7月にグレイスと、2020年8月にシビックセダンをすでに生産終了。そして、2021年3月末にはプレミオ/アリオンが生産終了する。

 日本を代表する唯一売れていたクラウンでさえも、SUVになると言われている時代だ。

 その一方で、輸入車に目を向けると、メルセデスベンツやBMW、アウディなどドイツ製セダンは、派生車種のSUVは激増しているものの、元になるセダンのフルモデルチェンジが長期化されることなくしっかり行われていて、日本車とは違いセダンの基幹車種としての“存在価値”が保たれている。

 なぜ、日本車のセダンはここまで衰退しているのか? もはや立ち直ることができないのだろうか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ スバル

【画像ギャラリー】セダンが売れない理由はどこにある? 惜しくも生産終了に追い込まれた不運の名車たち


なぜセダンが衰退していったのか?

カリーナとコロナの後継モデルとして登場したプレミオ/アリオン。ボディサイズは全長4590×全幅1695×全高1475mmの5ナンバーサイズ。写真は2007年6月発売の2代目プレミオ
カリーナとコロナの後継モデルとして登場したプレミオ/アリオン。ボディサイズは全長4590×全幅1695×全高1475mmの5ナンバーサイズ。写真は2007年6月発売の2代目プレミオ
プレミオの姉妹車アリオン。2016年のマイナーチェンジを受け、スポーティで高級感のある外観に
プレミオの姉妹車アリオン。2016年のマイナーチェンジを受け、スポーティで高級感のある外観に


■生産終了した国産車のセダン一覧
●トヨタマークX:2019年12月
●トヨタプレミオ/アリオン:2021年3月末
●レクサスGS:2020年8月
●日産ティアナ:2020年7月
●日産シルフィ:2020年9月
●ホンダシビックセダン:2020年5月
●ホンダグレイス:2020年7月
●スバルレガシィB4:2020年7月(国内販売終了)

 クルマが生活のツールとして定着すると、セダンが昔のような売れ筋カテゴリーでなくなるのは仕方ない。セダンのボディスタイルは、居住空間の後部に背の低いトランクスペース(荷室)を加える形状で、空間効率が低いからだ。

 もともと1930年頃までのボディ形状は、エンジンルームの後部に箱型の居住空間を配置する2ボックスタイプだった。この後、居住空間の後部に荷台を装着して荷物を載せるようになり、これが流線形のトレンドに沿ってボディの一部に取り込まれてセダンスタイルが誕生した。

販売不振により、2020年8月に生産終了したシビックセダン。ハッチバックとタイプRは引き続き販売されている
販売不振により、2020年8月に生産終了したシビックセダン。ハッチバックとタイプRは引き続き販売されている

 セダンは外観がスマートで美しく、空力特性も優れている。クルマが憧れの商品として普及する段階では、中心的なボディ形状になった。

 しかし居住空間の後部に、背が低く開口部の狭いトランクスペースを加える形状は、美しい代わりに空間効率では劣る。クルマが生活のツールになり、高効率が求められると、セダンが少数派になって2ボックスタイプに回帰するのは当然の成り行きだった。

 このようにセダンが売れ行きを落とし、ハッチバック、ミニバン、SUVが好調に売れるのは、クルマが普及した証だ。したがってセダンの衰退は、日本だけでなく海外でも進んでいる。

 ちなみにSUVは、セダンの衰退に伴って売れ行きを伸ばした新しいカテゴリーとされるが、これもボディスタイルは2ボックスタイプに分類される。

 居住空間から独立したトランクスペースはなく(過去にはセダンスタイルのSUVも存在したが)、ハッチバックやワゴンよりも背が高いから、ミニバンほどではないが空間効率が優れる。そのためにSUVにも、3列シート車が用意される。SUVの高人気も、2ボックスタイプへの回帰に含めてよい。

 以上の経緯を見ると、セダンは必然的に主役から退いたことになるが、その魅力まで消滅したわけではない。

 日本で軽自動車やコンパクトカーの販売比率が増えるのは当然だが、セダンを排除するのは行き過ぎだ。ユーザーのメリットにも反する。

次ページは : セダンの魅力を改めて見直すべき

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