スバルR2は凝りに凝った軽の名作! 一代限りで消えた挑戦【偉大な生産終了車】

■クルマ好きからは高い評価を得るも…R2生産終了の背景

 プロ、アマを問わず「車好き」からは高く評価されたスバル R2がなぜ、1代限りであっけなく生産終了となってしまったのか?

 そこにはさまざまな理由があるはずですが、「軽自動車ユーザーの嗜好を読み間違えた」というのが最大の理由であることは間違いありません。

 本稿の冒頭で述べたとおり、1993年に初代スズキ ワゴンRがデビューして以降の軽自動車界は、明らかに「デザインや走行性能うんぬんではなく、スペース効率の高さこそが命」という方向に向いました。

 いやもちろん、これは初代ワゴンRのデザインや走行性能がイマイチだという話ではありません。初代ワゴンRはデザイン面でも「傑作」だったと思っています。そうではなく「全体の流れ」という話です。

 で、そういった全体の流れに基づいて各社は軽トールワゴンに注力し、スバルも、ヴィヴィオの後継として1998年にトールワゴンタイプの初代プレオをデビューさせました。

 その後、誰もが「次はプレオを正常進化させた形の新しい軽トールワゴンがスバルから発売されるのだろう」と思っていましたが、当のスバルだけはまったく違うことを考えていました。

 前章でも申し上げた「寸法競争から解き放たれた個性的なスタイリングを最大の特徴とする」という軽自動車に、スバルのこだわりである直列4気筒エンジンと4輪独立懸架(のさらなる改良版)を組み合わせれば、世の中の人はこぞってスバル販売店を訪れ、R2を買って帰るだろう――と考えたのです。

 その判断の是非を今、まるで後出しジャンケンのようにとやかく言うつもりはありません。そして個人的には、そのように考えがちなスバルというブランドが大好きであるため、現在の筆者はスバル車を買って乗っています。

 しかし趣味の問題ではなく「経営の問題」としては、R2のマーケティングは結果として大間違いでした。

2+2の4シーターだが後席はミニマム。その設計は人々の志向、「軽に求めるもの」の変化の先とは別のところにあった
2+2の4シーターだが後席はミニマム。その設計は人々の志向、「軽に求めるもの」の変化の先とは別のところにあった

「R2は早すぎただけで、もっと後の時代に発売されていたならばヒットしたに違いない」という意見も、10年ほど前には聞かれました。しかしその後の「より一層の軽スーパーハイトワゴン天国」になった軽自動車界の現状を見れば、その意見もまた間違いだったことがわかります。

 ときにマーケットイン(市場のニーズを優先し、顧客の声や視点を重視して商品開発を行うこと)ではなく、プロダクトアウト(作り手がいいと思うものを作り、作ったものを売ること)に走りがちなスバルという会社の悪い部分が出てしまったのが、R2だったといえるでしょう。

 しかしそんなスバルだからこそ、いわゆる「いい車」や「車好きに刺さる車」を作ることができているというのも確かです。マーケットインでしか物事を考えなくなったスバルに未来はないような気がしますし、筆者も、そんなスバル車は買わないと思います。

 だがしかし……。いや車作りや自動車メーカー経営の舵取りというのは、本当に難しいものですね。

■スバル R2 主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1520mm
・ホイールベース:2360mm
・車重:780kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、658cc
・最高出力:54ps/6400rpm
・最大トルク:6.4kgm/4400rpm
・燃費:22.5km/L(10・15モード)
・価格:112万3500円(2004年式 R 5MT FF)

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