■FF化をきっかけにミッドシップへ
ベストセラーカーのトヨタ『カローラ』は、1983年春にモデルチェンジした。これを機にファミリー系モデルはFF方式になった。そしてFF・2ボックスの『カローラFX』も企画されている。その頂点に立つ搭載エンジンは、1.6Lの直列4気筒DOHC4バルブエンジンを横置きにした4A-GEU型だ。
自動車の生産台数において、トヨタが世界一になる時だったし、トヨタ自動車販売とトヨタ自動車工業が合併する時期でもあった。当然、トヨタの技術イメージを高めるスポーツカー的なクルマを開発したい、という声が、首脳陣やエンジニアから出てきたのである。
トヨタの主力となるカローラのセダンとハッチバックをFF化しようと考えた時、ミッドシップの2シーターモデルの設計が可能になった。FFレイアウトの前と後ろを逆にすれば、ミッドシップのスポーツカーが生み出せるのである。クルマの世界も多様化してきたし、セカンドカーを持つ人も増えてきた。そこで企画されたのが『MR2』だ。
■日本初量産ミッドシップ『MR2』誕生
1983年秋、第25回東京モーターショーが開催された。そのトヨタブースに「ミッドシップ方式のトヨタSV-3」を参考出品している。
そして翌1984年6月、SV-3は「トヨタ MR2」の名で正式発売に移された。MRは「ミッドシップ・ランナバウト」の略だ。開発の途中まではピュアスポーツカーとして開発していた。だがこれをパーソナル方向へと振り、多くの人が気軽に楽しめるように背を75mm高くしたのである。
日本初の量産ミッドシップカーは、低いノーズの先端には格納式のリトラクタブル・ヘッドライトを組み込み、ウエッジシェイプの後方はハイデッキとした。ドア後方にエアインテークが設けられているのがミッドシップの証しだ。
ボディカラーは2トーンを主役としている。インテリアは2人のための粋なコクピットにこだわり、メーターの両側にはサテライトスイッチを配した。
■1.6Lスーパーチャージャーエンジンを追加搭載
パワーユニットは、1587ccの4A-GELU型 直列4気筒DOHCが主役だ。このほかに1452ccの3A-LU型SOHC搭載車を設定している。トランスミッションは5速MTに加え、4速ATを用意した。
サスペンションは4輪ともストラットだ。45:55の重量配分を実現し、車重も950kgと軽かったからミズスマシのように軽やかな走りを見せた。そして1986年8月、化粧直しした時にルーツ式のスーパーチャージャーを装着した4A-GZLU型エンジン搭載車を追加する。
気持ちいい走りを全身で表現した初代のAW11型 MR2は、トイスポーツとしての魅力に満ちていた。アメリカでは女性も気軽に乗れるセクレタリーカーとしての人気も高かったのである。
だが、期待度が高かったから、もう少し高性能なスポーツカーを、と言う声も開発陣には届いていた。そこで2代目は排気量をアップし、スポーツカー的な要素を強めている。第2世代のMR2、SW20型がベールを脱ぐのは1989年10月だ。
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