今ならもっと売れていた?? 時代の先を行き過ぎた挑戦車たち

■ホンダ S-MX/1996年発売

まるでステップワゴンを切り詰めたようなホンダ S-MX
まるでステップワゴンを切り詰めたようなホンダ S-MX

 最近はルーミーの売れ行きが絶好調だ。姉妹車のタンクを廃止した影響もあり、2021年1月の登録台数は1万台を超えた。ルーミーのようなボディが短くて背の高いコンパクトカーとしては、1996年に発売されたS-MXが思い出される。プラットフォームを含めて、ステップワゴンを切り詰めたようなクルマであった。

 S-MXの全長は3950mm、全幅は1695mmだからフィットと同程度だが、全高は1750mmと高い。ボディは左右非対称で、左側は前後にドアがあり、右側は前席のみだ。エンジンは直列4気筒2Lを搭載した。

 ステップワゴンを2列シートに変更したようなクルマだから、後席を含めて車内は広い。後席には300mmのスライド機能が備わり、4名で乗車して多量の荷物も積めた。シートは前後席ともにベンチタイプで、前後席をリクライニングして連結させると、車内をベッドのようにアレンジできた。

 シートは柔らかく寝心地は良かったが、座席として使うと着座姿勢が安定しない。ドライバーは運転しにくく感じたが、車内の造りは実用的だ。後席の右側にはドアが装着されないため、カップホルダー、トレイ、フタの付いた収納ボックスなどが備わり、今日の多彩な収納設備を先取りしていた。

 1990年代の中盤はミニバンの全盛期で、2列シートのS-MXは1代限りで終了したが、その後に訪れるハイトワゴンの機能を備えていた。車内で就寝することを考えた今日のフリードプラスとも共通性が見られる。

■日産 ラシーン/1994年発売

今人気の高いコンパクトSUVの先駆けともいえる日産 ラシーン
今人気の高いコンパクトSUVの先駆けともいえる日産 ラシーン

 今はSUVの人気が高い。2000年代の新車販売に占めるSUV比率は、小型/普通乗用車の7%程度だったが、今は約20%に達する。特にキックスのような街中で運転しやすく割安なコンパクトSUVが注目されている。

 このカテゴリーの先駆けになったのが、1994年に発売されたラシーンだ。ボディサイズは、中級グレードになるタイプIIの場合、全長が4115mmで全幅は1695mmだ。全高は1515mmだから立体駐車場も使いやすい。

 外観はSUVらしく直線基調で、当時の流行に沿ってフロントマスクのグリルガード、背面スペアタイヤキャリア、電動ガラスサンルーフも用意された。リアゲートは上下に分割して開き、狭い場所での開閉性も優れていた。

 ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2430mmと短いこともあって、後席の足元空間が狭く、フルモデルチェンジは受けずに終わった。

 ファッション性に重点を置いたので、Be-1やパオのような車種と同列に見られやすいが、ラシーンは当時のSUVのデザイン要素を小さなボディに凝縮させている。今に通じるSUV時代の幕開けを象徴するクルマであった。

■ホンダ クロスロード/2007年発売

ラシーンと同じくコンパクトSUVのはしりとなったホンダ クロスロード
ラシーンと同じくコンパクトSUVのはしりとなったホンダ クロスロード

 実用的なコンパクトSUVでは、2007年に発売されたクロスロードが進歩的だった。ボディサイズは全長が4285mm、全幅は1755mmに収まるが、プラットフォームはコンパクトミニバンのストリームと共通でホイールベースも2700mmと長い。

 そのために荷室に3列目のシートを備える7人乗りであった。3列目の足元空間をフラットに仕上げるなど車内の造りにも気を配り、運転のしやすさと優れた使い勝手を両立させている。

 外観は直線基調だからラシーンに似ているが、コンパクトな割に存在感が強い。ボディの四隅が分かりやすく視界も良好だ。エンジンは直列4気筒の1.8Lと2Lで、動力性能にも余裕があった。

 コンパクトなボディと広くて使いやすい居住空間・荷室の両立は、2013年に発売されたヴェゼルに受け継がれている。もともとSUVの機能は、ミニバンとセダン&ワゴンの中間に位置するから実用的で、そこにカッコ良さも加わり人気を高めた。クロスロードはSUVの特徴を明確に表現していた。

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