■誤給油した場合、どうなるのか?
誤給油の内容としては大きく分けて3種類ある。一つはガソリン車に軽油を入れてしまった場合。二つ目はディーゼル車にガソリンを入れてしまった場合。最後がハイオク指定のガソリン車にレギュラーガソリンを入れてしまったケースだ。
まず最後のハイオク指定のクルマにレギュラーガソリンを誤給油してしまった場合。
この場合、ほとんどダメージはなく、輸入車であればちょっとエンジンの機嫌が悪くなる程度だから、ある程度走行してガソリンが減ったらハイオクガソリンを給油して、燃料タンク内部のガソリンのオクタン価を向上させてやれば解決する。
ハイオク指定のクルマはハイオクガソリンに含まれる添加剤などの成分が必要なのではなく、あくまでオクタン価が問題なのだ。
そもそも日本の自動車メーカーは、ハイオク専用車であってもハイオクガソリンが給油できない状態を想定して、レギュラーガソリンでも走れるよう燃料の変化に対応できるようエンジンECU内に点火時期の補正マップなどを広く設定している。
ただし輸入車は、日常的にガソリンの品質にバラつきがある欧州では、レギュラーとスーパー、プレミアムと3種類のグレードを用意してユーザーに選択させるようにしており、高性能車に乗るユーザーはプレミアムを給油する習慣がある。
そのため燃料の品質における許容範囲はそれほど広くとられていない車種も多い。日本でハイオク指定の輸入車にレギュラーガソリンを入れると、本来の燃焼状態を得られず、加速不良などの症状が現われることもある。この場合でもハイオクガソリンを給油すれば徐々に症状は改善する場合が大半だ。
■ガソリンと軽油は似て非なるモノ
ガソリンスタンドではレギュラーガソリン、ハイオクガソリンに加えて、軽油や灯油も燃料として販売している。どれも石油から精製される燃料油だから、大差はないと思いがちだが、これらには大きな違いがあるのだ。
ガソリンには揮発油税という名称の税金(現在は地方揮発油税と合わせてガソリン税と呼ばれている)が課せられている通り、放っておくと蒸発してしまう揮発性のある化石燃料だ。イメージとしてはアルコールに近い。
それに対して灯油や軽油はやや性質が異なり、揮発する部分もあるものの、ガソリンほど顕著ではなく燃やせば燃えるものの、ガソリンほどの引火性はない燃料。
つまり燃えやすいガソリンと燃えにくい軽油、しかもガソリンは周囲の油分を奪うような性質で、軽油は若干の潤滑性を持っている。これがエンジンに対してどのような影響をおよぼすのか、考えてみよう。
燃えやすいガソリンを燃料とするガソリン車に軽油を誤給油してしまうと当然のように燃えにくくなる。
燃えにくいだけでなく、石油ストーブ(燃料は灯油)が不完全燃焼しているかのような(実際そうだが)、嫌な臭いが漂い、それが燃焼室周辺や排気系に燃えカスとして残るため、かなりの期間に渡って悪臭に悩まされることになる。
さらに給油量によっては、軽油分が多くなったところで燃えなくなって、エンジンが止まってしまうことになる。こうなる前に気付いた瞬間に燃料を交換するなどの措置を施す。完全に元通りにするには、燃料系からエンジン内部まで洗浄するしかない。
それよりも問題なのはディーゼル車にガソリンを誤給油してしまうケースだ。軽油には若干の潤滑油分が含まれる。これがディーゼルの燃料ポンプを潤滑していることにより、燃料を高い圧力で送り出せるのだ。
ところがガソリンが混ざってしまうと、潤滑不良となりポンプ内の摩擦が上昇して、最悪の場合燃料ポンプは壊れてしまう。壊れなくても、潤滑不足によるダメージが後々トラブルを起こす可能性もあるから、誤給油して走行してしまったら、大事を取って燃料ポンプを交換することを薦めるディーラーもあるだろう。
燃えやすいガソリンだが、それは火気に対して敏感ということで、火気がなければ軽油より燃えにくいから、また厄介なことになる。ディーゼル車にガソリンを給油してもやはり燃えにくく、エンジンの調子は悪くなるのだ。
燃料の誤給油は想定されていないし、そもそもエンジンの燃焼メカニズムが異なるためガソリンは燃えないから、エンジンECUが混乱してエラーを起こし、噴射ノズルが故障し、エンジンが運転不能、始動不能という状況に陥る。
この場合、焦ってエンジンの始動を試みるのは逆効果なので、ロードサービスを依頼して救援を待つしかない。
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