誤給油はなぜ減らない? ガソリン車に軽油を入れるとどうなる?

 東京都内では、サービス付きのガソリンスタンドが年々少なくなり、セルフサービスのガソリンスタンドを利用することが当たり前になってきている。

 しかし、セルフスタンドに慣れたとはいえ、考えごとをしたり、急いでいて、ついうっかり、燃料を入れ間違えてしまう可能性もある。実際、JAFが調査した2018年の年末、12月1日~31日までのたった1ヵ月間で、燃料の入れ間違いトラブルが全国で390件も発生しているのだ。

 はたして、ディーゼル車にガソリン、ガソリン車に軽油を入れてしまった時はどう対処すればいいのだろうか? またどんな修理が必要になるのか? その費用はどうなるのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカーweb編集部、Adobe Stock(トビラ写真はAdobe Stock@mikitea)

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■燃料誤給油によるトラブルはなぜ起きる?

セルフスタンドの給油ノズルは燃料の種類ごとに色分けされている(Adobe Stock@mikitea)

 クルマの燃料を誤って指定されたモノではない種類を給油してしまう「誤給油」というトラブルは、JAFが2018年12月1日~31日の1ヵ月間で調査したデータによれば、全国で390件もあったという。

 ドライバーが入れ間違いに気づかず、走行不能などのトラブルとなってから救援を要請されたケースなども想定されるため、実際の数はさらに増えることが考えられるという。

●燃料の入れ間違いによるJAFへの救護要請件数
(2018年12月1日~12月31日:一般道:373件、高速道路:17件、総計:390件)

 ちなみに、ドライバーからの申告では、「(会社のクルマや代車など)自分のクルマではなかった」「うっかり間違えてしまった」といったケースや、先に触れた「軽自動車は軽油と思った」といったものが多く、勘違いや思い込みがトラブルにつながっていることが見受けられたとされている。

 軽油という名称から、これを軽自動車用の燃料だと勘違いしてしまうのは信じられないことだ。軽油というのは重油と灯油の中間的存在から名付けられたモノで、軽自動車は小型車よりも小さく軽いクルマという意味で付けられた名称だ。関連性はないのだが「軽」というキーワードが共通するのは、紛らわしいのも事実。

軽油という名称から、軽自動車に給油してしまうという信じられないトラブルも少なくない

 ガソリンスタンドでは軽自動車に軽油を給油しないよう、給油ノズル付近に注意書きなどを置いているところもあるようだが、入れ間違い事故の解消には至っていない様子である。

 おそらくお客さんが少ない時には、給油機の操作を監視しているスタッフが、ガソリン車に軽油を給油しようとしていないかチェックしているのだろうが、立て続けに何台も給油に来られると、承認作業が慌ただしくなって、見逃してしまうケースも出てきてしまうのではないだろうか。

 セルフ作業はあくまで自己責任、苦手なドライバーはセルフ給油のガソリンスタンドではなく、フルサービスのスタンドを選んだほうがいいのだが、このご時世、なかなか納得価格のフルサービススタンドを探すのも難しい。

 ちなみに筆者は時間が許せば、地元のフルサービスのガソリンスタンドも利用するようにしている。理由は、セルフスタンドばかりを利用していると、フルサービスのスタンドがますます減り、スタンドの従業員も減っていってますます人材不足に陥るからだ。

 調べてみれば、セルフ価格とほとんど変わらないフルサービスのガソリンスタンドも存在する(価格競争で止むなくそうしたのだろう)ので、フルサービスのスタンドも時々は利用することをお薦めしたい。

■誤給油した場合、どうなるのか?

JIS規格で間違えないように軽油、ガソリンに着色することが義務づけられている。左のグリーンが軽油。右の2つのビーカーに入っているオレンジ色がガソリン。ハイオクガソリンとレギュラーガソリンの区別はつかない

 誤給油の内容としては大きく分けて3種類ある。一つはガソリン車に軽油を入れてしまった場合。二つ目はディーゼル車にガソリンを入れてしまった場合。最後がハイオク指定のガソリン車にレギュラーガソリンを入れてしまったケースだ。

 まず最後のハイオク指定のクルマにレギュラーガソリンを誤給油してしまった場合。

 この場合、ほとんどダメージはなく、輸入車であればちょっとエンジンの機嫌が悪くなる程度だから、ある程度走行してガソリンが減ったらハイオクガソリンを給油して、燃料タンク内部のガソリンのオクタン価を向上させてやれば解決する。

 ハイオク指定のクルマはハイオクガソリンに含まれる添加剤などの成分が必要なのではなく、あくまでオクタン価が問題なのだ。

 そもそも日本の自動車メーカーは、ハイオク専用車であってもハイオクガソリンが給油できない状態を想定して、レギュラーガソリンでも走れるよう燃料の変化に対応できるようエンジンECU内に点火時期の補正マップなどを広く設定している。

 ただし輸入車は、日常的にガソリンの品質にバラつきがある欧州では、レギュラーとスーパー、プレミアムと3種類のグレードを用意してユーザーに選択させるようにしており、高性能車に乗るユーザーはプレミアムを給油する習慣がある。

 そのため燃料の品質における許容範囲はそれほど広くとられていない車種も多い。日本でハイオク指定の輸入車にレギュラーガソリンを入れると、本来の燃焼状態を得られず、加速不良などの症状が現われることもある。この場合でもハイオクガソリンを給油すれば徐々に症状は改善する場合が大半だ。

■ガソリンと軽油は似て非なるモノ

マツダ2はガソリンとディーゼルエンジンの両方をラインナップしている。ディーゼル音が昔に比べると静かになっているので、レンタカーを借りた時など誤給油に要注意

 ガソリンスタンドではレギュラーガソリン、ハイオクガソリンに加えて、軽油や灯油も燃料として販売している。どれも石油から精製される燃料油だから、大差はないと思いがちだが、これらには大きな違いがあるのだ。

 ガソリンには揮発油税という名称の税金(現在は地方揮発油税と合わせてガソリン税と呼ばれている)が課せられている通り、放っておくと蒸発してしまう揮発性のある化石燃料だ。イメージとしてはアルコールに近い。

 それに対して灯油や軽油はやや性質が異なり、揮発する部分もあるものの、ガソリンほど顕著ではなく燃やせば燃えるものの、ガソリンほどの引火性はない燃料。

 つまり燃えやすいガソリンと燃えにくい軽油、しかもガソリンは周囲の油分を奪うような性質で、軽油は若干の潤滑性を持っている。これがエンジンに対してどのような影響をおよぼすのか、考えてみよう。

 燃えやすいガソリンを燃料とするガソリン車に軽油を誤給油してしまうと当然のように燃えにくくなる。

 燃えにくいだけでなく、石油ストーブ(燃料は灯油)が不完全燃焼しているかのような(実際そうだが)、嫌な臭いが漂い、それが燃焼室周辺や排気系に燃えカスとして残るため、かなりの期間に渡って悪臭に悩まされることになる。

 さらに給油量によっては、軽油分が多くなったところで燃えなくなって、エンジンが止まってしまうことになる。こうなる前に気付いた瞬間に燃料を交換するなどの措置を施す。完全に元通りにするには、燃料系からエンジン内部まで洗浄するしかない。

ディーゼル車にガソリンを誤給油してしまうとガソリンには十分な潤滑性がないので深刻な症状が起きる。もともと残っていた軽油の量と給油したガソリンの量によって違うが誤給油後に始動、走行できた場合でも出力が落ち、排気ガスに白煙が混じりやがては噴射ノズルが故障してしまう

 それよりも問題なのはディーゼル車にガソリンを誤給油してしまうケースだ。軽油には若干の潤滑油分が含まれる。これがディーゼルの燃料ポンプを潤滑していることにより、燃料を高い圧力で送り出せるのだ。

 ところがガソリンが混ざってしまうと、潤滑不良となりポンプ内の摩擦が上昇して、最悪の場合燃料ポンプは壊れてしまう。壊れなくても、潤滑不足によるダメージが後々トラブルを起こす可能性もあるから、誤給油して走行してしまったら、大事を取って燃料ポンプを交換することを薦めるディーラーもあるだろう。

 燃えやすいガソリンだが、それは火気に対して敏感ということで、火気がなければ軽油より燃えにくいから、また厄介なことになる。ディーゼル車にガソリンを給油してもやはり燃えにくく、エンジンの調子は悪くなるのだ。

 燃料の誤給油は想定されていないし、そもそもエンジンの燃焼メカニズムが異なるためガソリンは燃えないから、エンジンECUが混乱してエラーを起こし、噴射ノズルが故障し、エンジンが運転不能、始動不能という状況に陥る。

 この場合、焦ってエンジンの始動を試みるのは逆効果なので、ロードサービスを依頼して救援を待つしかない。

■誤給油してしまったら、修理費用はいくらかかる?

マツダでは給油時のうっかりミス防止に役立つ、「フューエルフィラデカール」をショップオプションにて用意している

 ガソリン車にしても、ディーゼル車にしても、給油している時点で間違いに気付けば、燃料タンクの洗浄だけで済むので、被害はグッと少なくなる。誤給油に気付かず、エンジンをかけて走らせてしまった場合は、燃料タンクの洗浄だけでは済まなくなる。

 ちなみに筆者は高校生の頃、ガソリンスタンドでアルバイトをしており、その時に一度、誤給油をやらかしている。

 なんと原付バイクにうっかり軽油を給油してしまったのだ。その時には、給油途中で気付き、タンク内の燃料を抜き取ってガソリンを入れ直しただけで済んだ(後からバイクのオーナーにクレームを言われたことはないので、たぶん大丈夫だったようだ)。

 ガソリン車の場合は燃料系を洗浄するだけで済む場合が多いので5万円以内で済むことが大半だ。ただし、しばらくの間はマフラーから白煙と、石油ストーブを消した直後の不完全燃焼の臭いが漂うことになる。

 これらを修理で完全に解消させようとなると、燃料系や排気系の完全洗浄や部品交換が必要になるので、大きなダメージになった場合の費用は十数万円になってしまう。

 ディーゼル車にガソリンを入れた場合は軽油に対してガソリンは潤滑性が低いため、初期ではエンジンは作動していてもすぐにパワーが失われてくる。エンジン音が高まるとともに、アイドリングも不安定となって排ガスは白くなってくる。

 こうなると燃料ポンプやインジェクターが摩耗や焼き付きを起こしてしまうことになる。結果として、オーバーホールが必要になって、修理費用もフルオーバーホールでは30万円程度かかるケースも起こりうるという。

 昔のディーゼル車はガソリン車に比べ、ガラガラという大きなエンジン音で見分けがつきやすかったが、マツダのクリーンディーゼル車は、ガソリン車並みに静かになってきており、見分けがつきにくくなった。

 旧式のディーゼル車に比べてマツダのSKYACTIV-Dは部品代が高額なため、修理代が50万円を超える事例もあるという。いずれにしてもディーゼル車にガソリンを誤給油してしまったらエンジンをかけないことが必須。

 自分のクルマで誤給油してしまった場合は、最低限の修理費用で回復させて、様子を見るのも現実的な手段だが、レンタカーなど借り物の場合は完全に修理して返却する必要がある。

 むしろめったにクルマに乗らないレンタカーユーザーのほうが、誤給油は起こしやすいのではないだろうか。例えばレンタカーのハイエースを借りた場合、「バンだからディーゼルだろう」という先入観で、ガソリン車に軽油を入れるケースも大いにありうる。

 また、最近はガソリンでも直噴エンジンが増えてきたため、アイドリングでカラカラとディーゼルエンジンのような燃焼ノイズを発するクルマも多いことが、誤給油の原因の一つではないか、という意見もあるようだが、そもそもエンジンノイズに敏感なクルマ好きが燃料を誤給油するとは思えない。

 やはり便利になり過ぎたが故、無頓着になったドライバーが誤給油をしでかすのではないだろうか。

 いずれにしてもたった1ヵ月間で、390件の燃料の入れ間違いがあるのだから、自分は絶対しない、ありえないと思わずに給油の際に再確認してほしい。

*   *   *

 最後にまとめとして、注意事項を改めて書いておこう。

●セルフスタンドのノズルカバーやノズル受けには、誤給油を防ぐため、ハイオクガソリンは「黄」、レギュラーガソリンは「赤」、軽油は「緑」、灯油は「青」に色分けされているので間違いないように注意。

●セルフスタンドで万が一、ガソリン車に軽油を入れてしまった、ディーゼル車(軽油)にガソリンを入れてしまったら、絶対エンジンをかけないこと。すぐにガソリンスタンドのスタッフに伝え、可能であれば燃料を抜いたり洗浄作業を依頼する。

 繰り返すが、ガソリン車に軽油、ディーゼル車にガソリンを誤給油してしまった場合はエンジンをかけないことだ(気づかない場合は別だが)。セルフスタンドに人がいなかったり、作業を断られた場合にはJAFや加入している任意保険のロードサービスに連絡して救援措置を取るか、ディーラーや整備工場に相談してみよう。

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