■ハイブリッド専用車「2つのパターン」とガソリン車なしの理由は?
対するハイブリッドのみの車種には、2つのパターンがある。
ひとつはプリウス、アクア、インサイトなど、もともとハイブリッド専用車として生まれたクルマだ。1997年に初代プリウスが世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売されて以降、アクアが登場する2011年頃までは、ハイブリッドはまだ目新しい技術だった。
そこでハイブリッド専用車を開発すれば、優れた環境性能が外観デザインにも表現され、遠方から見てもハイブリッドだとわかる。ユーザーの満足感を高め、環境技術を特徴とする法人からも好評だった。
取引先に出向いた時、「御社は社用車もプリウスなんですね」という反応を受けられるからだ。法人のイメージアップにも繋がった。
ハイブリッド専用車の2つ目のパターンは、ノート、アコード、レジェンドのように、以前はノーマルエンジンも用意したが、現行型はハイブリッドのみになるものだ。
この背景にはクルマ造りの効率化がある。ノートの開発者は次のように説明した。
「新型ノートは液晶メーターの採用など、先代型に比べて内装の質を高めた。これは価格が200万円を超えるe-POWERだから可能になった」
「(価格が150~160万円の)ノーマルエンジン車では、このメーターや内装はコスト的に採用できない。そうなれば2種類の内装を用意する必要がある。そして先代ノートの販売比率を見ると、e-POWERが75%前後に達したので、ノーマルエンジンは廃止した」
いわゆる選択と集中で、キックス、インサイト、アコードなどにも同様の事情がある。キックスはタイで生産される輸入車だから、グレード、メーカーオプションパーツ、パワーユニットの種類を抑えたい。
インサイトやアコードは、海外向けの比較的大柄なセダンだから、日本で大量な販売は望めない。そこでe:HEVに限定した。
このようにハイブリッドとノーマルエンジンを併用するか、それとも専用車か、という判断は、今までの流れ、開発/製造費用、国内市場の販売計画台数などに応じておこなわれる。
大量販売を積極的に狙う車種で、開発/製造費用も費やせるなら、ノーマルエンジンとハイブリッドを両方とも採用できる。しかし、開発/製造費用をあまり掛けられなかったり、ノーマルエンジンの販売規模を見込めない場合はハイブリッド専用車になる。
特にプリウス、アクア、インサイトは、ハイブリッドの普及段階で専用車として発売されたから、市場に強いインパクトを与えた。今さらノーマルエンジンは用意できない。仮にプリウスに直列4気筒2Lノーマルエンジンを搭載するグレードを加えたら、売れないだけでなくイメージダウンも招く。
■今後はクラウンや新型エクストレイルも「ハイブリッド専用化」へ!?
気になるのは今後の動向だ。まずレクサスの各車、C-HR、クラウンなどは、ハイブリッド比率が高く、少数のノーマルエンジンを廃止する可能性がある。次期ヴェゼルもe:HEVは3グレードを用意するのに、ノーマルエンジンは1グレードだ。
ヴェゼルがe:HEVを中心に据えながら、ノーマルエンジンも残した理由は、価格の安いグレードも必要になるからだ。
たとえ、最終的には高価なe:HEVを選ぶとしても、それしか用意されないと、最初の段階でユーザーがヴェゼルを高価格車と判断して諦めてしまうことも考えられる。検討してもらうには、求めやすいグレードも必要だ。
このような動向も踏まえると、現時点でハイブリッドのない売れ筋車種は、今後マイルドタイプを含めてハイブリッドを加えていく。ルーミー、ライズ、パッソ、レヴォーグなどは、これから電動機能を充実させる。
それでも車種数はあまり多くない。なぜなら、ヤリス、フィット、カローラシリーズ、ノート、アルファードなど、登録車販売ランキングの上位車種は、すでに大多数がハイブリッドをノーマルエンジンと併せて用意するからだ。
そうなるとハイブリッド専用車は、今後新たに発売される車種に増える。2021年に発売される車種としては、カローラクロスがハイブリッド専用になる可能性が高い。エクストレイルの次期型、次期レクサス NXなども同様だ。
2020年度燃費基準は、環境性能の水準を一気に引き上げるから、各メーカーともに、ハイブリッドを含めた電動車を増やすことは間違いない。ただしノーマルエンジン車を廃止して、ハイブリッド専用車に特化できるのは一部の車種だけだ。
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