昔のプリウスはなかった!? ハイブリッド車の「ヒュイーン」と聞こえる人口音 なぜ必要?

実はメーカーごとに違う!! 接近音が発生する「条件」

 そんな車両接近警報装置は、どんな状況で作動するのか。音を発生する車速域について各社の説明を見ると、

ホンダ:約20km/h 以下で走行しているとき。
トヨタ:時速25km以上になると止まります。
日産:発進時、車速が30km/h以内のとき。減速時、車速が25km/h以下になったとき。
スバル:発進時車両が動き出した時から24km/hまで音を発生し、速度に合わせて音量・音色が変化し、速度感を表します。減速時は速度が21km/h以下になったら鳴り始めます。
メルセデス・ベンツ:30km/h以下での走行時。
三菱:EV走行時、車速が約35km/h以下のとき。

 とそれぞれ異なるが、保安基準では「発進から20km/hに至るまでの速度域及び後退時」に音を発することが必要とされている。それ以上の車速域に関しては各社の裁量というわけだ。

 音を発するのはあくまで駐車場や狭い道などでクルマと人が混在するような状況を想定したもの(スバルは「車両の前後左右から2m以内の場所にいる歩行者にしっかりと音が届くように」と説明)であり、幹線道路などでは機能しない。

 車速が上がるとタイヤが発生するノイズが大きくなりエンジンを掛けなくても走行が無音でなくなることも理由のひとつである。

 また、エンジン音の代わりと考えているので、EVは常に作動するが、ハイブリッドカーではエンジンが作動していないときに音を出す(エンジン作動中は人工音を発しない)のが基本だ。

初の標準搭載は2010年発売の日産 リーフ! 接近音は昨年より完全義務化

車両接近警報装置が標準装備された日産初代リーフ(2010年~2017年/全長4445×全幅1770×全高1545mm)
車両接近警報装置が標準装備された日産初代リーフ(2010年~2017年/全長4445×全幅1770×全高1545mm)

 そんな車両接近警報装置だが、登場したのはここ10年ほどだ。最初に標準搭載されたのは、2010年12月に発売された日産リーフの初代型。電気自動車の静かさゆえのウィークポイントを補うアイテムとして採用された。

 ハイブリッド車では、トヨタが2010年8月に3代目プリウス用に設定。タイミングとしては日産 リーフよりもはやいが、こちらは標準採用ではなく販売店オプションとしての用意だった。メーカーの市販車として展開されるのは、このプリウスが初めてのケースだ。

 いずれも同年1月に国土交通省が策定した「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」に沿って開発されたものである。

 その後、国土交通省は道路運送車両の保安基準を改正し、電気自動車やハイブリッドカーへの車両接近警報装置の装着を義務化。新型車では2018年3月8日から、継続生産車では2020年10月8日から装着が必須となっている。

 それを受けて現在では、低速走行時にエンジン音を発することのない全ての新型車に車両接近警報装置が装着されているのだ。

電動車の「音」は今後ますます身近に! 個性化進む可能性も

車両接近警報装置の義務化以前にあった車両接近通報音の発音保留スイッチ。(写真:日産現行型シーマ)
車両接近警報装置の義務化以前にあった車両接近通報音の発音保留スイッチ。(写真:日産現行型シーマ)

 そんな車両接近警報装置だが、かつて用意されていたタイプと義務化以降のタイプでは大きな違いがあるのをご存じだろうか。

 それは「キャンセルスイッチ」の有無だ。かつての車両接近警報装置は、ドライバーが任意の操作で音の発生をオフにして低速走行時に無音にすることができた(作動オンがデフォルトなのでシステム再始動時は自動的にオンになる)。

 いっぽう義務化以降のタイプにはキャンセルスイッチが禁止され、ドライバーの操作で音を止めることができないのだ。理由はもちろん、安全を最優先に考えているためである。

 歩行者に車両の存在を感じてもらうためのエンジン音の代わりといえる車両接近警報装置。電動化車両の増加に従い、今後はますます拡大していくことは間違いない。

 さらには演出として、高級車はよりエレガント、スポーツカーはひときわ爽快な音とするなど、音の個性化が進んでいく可能性もゼロではないだろう。

【画像ギャラリー】2010年に初めて車両接近警報装置が標準装備された日産初代リーフをみる

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