次期e-NV200になるか!? 日産の次世代小型商用EVはルノーと車台共用化へ!

■次期商用EV成功のカギは日産のバッテリー技術をフル活用できるかにかかっている

 その際に重要なことは、消費財である乗用車に比べ、商用車は生産財としてその車両価格が最大の要件になることだ。仕事に使って利益を得るには、それ相応の価格に収まるEVでなければならない。

 原価という点で、もっとも懸念されるのがリチウムイオンバッテリーの価格だ。また確実に手に入れる仕入れ先の確保も重要である。リチウムイオンバッテリーの原価自体は、大量生産すれば安くなるというほど簡単ではない。

 製造には、最新の設備が必要であり、それはほぼ無人化で運営され、使用中の事故原因となる不純物が製造過程で紛れ込まない厳重な管理が不可欠なのである。万一、不純物がリチウムイオンバッテリー内部に含まれると、それを原因にショートし、高熱を発するなど、火災の原因ともなりかねない。半導体素子のウェハーを製造するくらい厳密で清浄な製造工程が求められるともいわれる。

 日産は、『初代リーフ』を発売する際に、NECと共同で自らリチウムイオンバッテリーを開発・製造した。独創のラミネート型リチウムイオンバッテリーは、世界累計50万台のリーフを販売してなお事故ゼロを誇る。現在は中国資本へ会社が売り渡されたが、日産にはEVを製造するだけでなく、リチウムイオンバッテリーをいかに安全に管理・運用するかという知見が詰まっている。

『e-NV200』のインパネまわり。ベースの「NV200」と比べるとEVならではの若干の未来感も感じないこともない。が、いかにもの取ってつけ感が、過渡期のEVであることを物語ってしまう
『e-NV200』のインパネまわり。ベースの「NV200」と比べるとEVならではの若干の未来感も感じないこともない。が、いかにもの取ってつけ感が、過渡期のEVであることを物語ってしまう

 それは提携先のルノーにとっても大きな財産であるはずだ。生産財である商用車は、価格の安さが重要だといっても、さらにそれが耐久・信頼性に優れていなければ、商売が滞ってしまう弊害も生じかねないのである。そこで商用EVに導入に際し、ルノー・日産・アライアンスを活かす余地は大いにあると考えられる。

■ルノーのEVビジネスは「EVをより身近に」を具現化した販売方法に特徴あり

 ところで、ルノーの電気自動車(EV)販売については、日本であまり語られることがない。しかし、カングーの商用車であるバンのEV『カングーZ.E.』は、2011年以降欧州ですでに5万台が販売されている。日産の『e-NV200』は、2014年の発売以来4万2000台が生産され、欧州でも1万台が販売されたというから、両車はほぼ似たような実績を上げているといえるのではないか。

 この両車はまた、日産『リーフ』と同じAESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ)製のラミネート型リチウムイオンバッテリーを使用している。商用車としての耐久・信頼性において顧客の信頼を勝ち得る要素といえる。

 そのほかルノーでは、初代リーフより車体全長の短い『ZOE(ゾエ)』という小型乗用のEVを販売しており、2012年の発売開始から19年までで累計17万7000台以上が売られている。累計50万台を誇るリーフと比べれば差があるが、欧州を中心とした販売としては健闘しているといえるだろう。

ルノー『ZOE(ゾエ)』欧州での販売方法がユニークで、車両本体価格+バッテリーリース代としていた。日産は初代リーフで同様の販売方法を日本で画策したが、独禁法の壁に勝てなかった
ルノー『ZOE(ゾエ)』欧州での販売方法がユニークで、車両本体価格+バッテリーリース代としていた。日産は初代リーフで同様の販売方法を日本で画策したが、独禁法の壁に勝てなかった

 ゾエを着実に販売しようとするルノーの意思は、その販売の仕方にも表れている。EVとしての車両価格は、約2万ユーロ(為替レート127円として、254万円)で売り出し、リチウムイオンバッテリー代を月々のリース料として徴収する手法をとる。

 そのリース代金は、年間1万2500kmの走行距離の場合で79ユーロ(約1万円、36カ月)とした。これにより、EVを手に入れやすくした。もちろん、購入に際しては6300ユーロ(約80万円)の購入奨励金が支給されるため、もっと安く手に入れられる。

 リチウムイオンバッテリー代金を車両価格から差し引き、EVを安く手に入れられるようにした考え方は、初代リーフの発売前に、当時のカルロス・ゴーン社長が、そうした手段も考えられると語っている。

次ページは : ■ルノーはEVビジネスについて30年近く前からアヴァンギャルドな構想を練っていた!

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