日産自動車の欧州部門は2021年2月12日、欧州市場向けに次世代の小型商用車を開発していると発表した。
現在、日産は国内で商用EV「e-NV200」を販売しているが、その次期型はルノー「カングー」と車台を共用化した新型小型商用車となるのだろうか!? ルノー「カングー」と車台を共用化するとのことだが、サイズ的には現在の「NV200」とピタリと合いそうだ。
そうなると、2014年に登場し、現在7年が経過した商用EV「e-NV200」の次期型は、この次世代小型商用EVが担うことになるのではないだろうか……。
あまり日本では知られていないルノーのEV技術の現状と、どのような商用車EVであれば世界的に受け入れられるモデルとなり得るのか? さらには、「商用車もすべてEVになるのか」というあたりも含め考察していきたい。
文/御堀直嗣
写真/NISSAN、RENAULT
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■日産の新型商用バンはカングーとプラットフォーム共用で開発か?
2020年の11月に、ルノーの『カングー』とそのバンがモデルチェンジを予定すると発表があった。そして乗用も商用へも、電動車が設定されるとのことだ。カングーは、もともとルノーの商用バンから乗用が生まれたという経緯がある。
日産の商用バンでもある『NV200』も、『セレナ』というミニバンがありながら、乗用の設定のある車種だ。そして2009年にそれまでの『バネット』からフルモデルチェンジしてからすでに12年目に入るので、そろそろ新しくなってもいいかもしれない。
ルノー・日産・アライアンスの提携関係からすると、新型カングーと次期NV200が、プラットフォームなどで共通性を持つことも想像できるのではないだろうか。実際、新型のルノー『ルーテシア』と日産『ノート』は共通のプラットフォームを用い、それぞれに車体全長を短くするというコンパクトカーとして寸法の適正化をはかりながら、優れた走行性能を実現し、一段上の車格を体感させる。
世界がEV導入へ動き出したいま、ルノー・日産・アライアンスが一体となった商用車へのEV化も、今後進んでいくことを大いに期待したい。
■次期商用EV成功のカギは日産のバッテリー技術をフル活用できるかにかかっている
その際に重要なことは、消費財である乗用車に比べ、商用車は生産財としてその車両価格が最大の要件になることだ。仕事に使って利益を得るには、それ相応の価格に収まるEVでなければならない。
原価という点で、もっとも懸念されるのがリチウムイオンバッテリーの価格だ。また確実に手に入れる仕入れ先の確保も重要である。リチウムイオンバッテリーの原価自体は、大量生産すれば安くなるというほど簡単ではない。
製造には、最新の設備が必要であり、それはほぼ無人化で運営され、使用中の事故原因となる不純物が製造過程で紛れ込まない厳重な管理が不可欠なのである。万一、不純物がリチウムイオンバッテリー内部に含まれると、それを原因にショートし、高熱を発するなど、火災の原因ともなりかねない。半導体素子のウェハーを製造するくらい厳密で清浄な製造工程が求められるともいわれる。
日産は、『初代リーフ』を発売する際に、NECと共同で自らリチウムイオンバッテリーを開発・製造した。独創のラミネート型リチウムイオンバッテリーは、世界累計50万台のリーフを販売してなお事故ゼロを誇る。現在は中国資本へ会社が売り渡されたが、日産にはEVを製造するだけでなく、リチウムイオンバッテリーをいかに安全に管理・運用するかという知見が詰まっている。
それは提携先のルノーにとっても大きな財産であるはずだ。生産財である商用車は、価格の安さが重要だといっても、さらにそれが耐久・信頼性に優れていなければ、商売が滞ってしまう弊害も生じかねないのである。そこで商用EVに導入に際し、ルノー・日産・アライアンスを活かす余地は大いにあると考えられる。