N-BOXのHVはいつ出る? ホンダの軽電動車はどうなるのか?

地方在住者の重要な足、軽が電動化によって高騰し買えなくなる!?

N-BOXのHVはいつ出る? ホンダの軽の電動車はどうなるのか?
日本でいま一番売れている軽自動車、N-BOX。売れ筋グレードLのWLTCモード燃費は21.2km/L。今のままでは、2030年燃費基準の達成目標(約27.8km/L)に届かない

 今のホンダにとって軽自動車は一番の売れ筋カテゴリーだが、2030年度燃費基準に対応すべくフルハイブリッドや電気自動車になると、価格が大幅に高まる。

 軽自動車は、価格、税額、燃料代などが安いため、公共の交通機関を利用しにくい地域では、買い物や通勤に欠かせない移動手段になっている。年金で生活する高齢者が、軽自動車を使って買い物や通院をしていることを考えると、ライフラインともいえる。

 つまり軽自動車はカテゴリー自体に福祉車両の性格が伴い、公共性も高い。ハイブリッドや電気自動車になって価格が高まると、移動の自由、さらには生活権まで奪われるユーザーが生じかねない。軽自動車については、2030年度燃費基準に対応しながら、価格の上昇を抑えることが求められている。

 2030年度燃費基準は、2020年度と同様、CAFE(企業別平均燃費方式)によって判断される。そのために燃費の優れた車種を大量に販売すれば、燃費の悪いクルマを少し売ってもカバーできるが、燃費数値は2020年度に比べると大幅に引き上げられる。

 例えば現行N-BOXで売れ筋になる標準ボディのLは、車両重量が900kgでWLTCモード燃費は21.2km/L(JC08モード燃費は27km/L)だ。従来の2020年度燃費基準では、900kgの車両重量に相当するJC08モード燃費が23.7km/Lだったから、27km/LのN-BOX・Lは十分にクリアできていた。

 ところが2030年度燃費基準では、900kgの車両重量に相当するのは、WLTCモード燃費で27.8km/L前後だ。計測方法がWLTCモードに変わり、さらに燃費基準の数値も引き上げられる。N-BOX・LのWLTCモード燃費は前述の21.2km/Lだから、燃費数値を31%向上させねばならない。

 低価格で採用できる環境技術としては、マイルドハイブリッドがある。モーター機能付き発電機を搭載して、減速時の発電/エンジン駆動の支援/アイドリングストップ後の再始動を行い、発電された電気は小さなリチウムイオンバッテリーなどに蓄える方式だ。

 このシステムは軽自動車に幅広く使われるが、燃費数値の向上率は低い。例えばワゴンRの場合、NAエンジンのWLTCモード燃費は24.4km/Lで、マイルドハイブリッドは25.2km/Lだ。3%の燃費向上だから、N-BOX・Lが2030年度燃費基準を達成するために必要な31%には遠くおよばない。N-BOXにマイルドハイブリッドシステムを加えただけでは、2030年度燃費基準をクリアするのは困難だ。

 それならフルハイブリッドシステムならどうか。フィットのホームでNAエンジンとハイブリッドのe:HEVを比べると、後者の数値は43%向上している。ヤリスでは1.5LNAエンジンとハイブリッドを比べると、G同士の比較でハイブリッドのWLTCモード燃費は67%向上する。

N-BOXのフルHVが登場する?

フルハイブリッド搭載車の価格設定は、割高感が生じない水準にとどめることが望ましい。軽自動車の場合、ユーザーにとって妥当といえるハイブリッド車とガソリン車の価格差は20万円前後だろう
フルハイブリッド搭載車の価格設定は、割高感が生じない水準にとどめることが望ましい。軽自動車の場合、ユーザーにとって妥当といえるハイブリッド車とガソリン車の価格差は20万円前後だろう

 したがってN-BOXにフルハイブリッドを搭載すると、2030年度燃費基準を達成できる。同様のことがほかの軽自動車にも当てはまる。この時に問題になるのが価格だ。コンパクトカーは価格競争が激しいので、ホンダフィットホームでは、NAエンジンとハイブリッドの価格差をほかの車種に比べて小さく抑えた。それでも34万9800円の上乗せだ。ヤリスGは37万4000円になる。

 このように今のところ、NAエンジンとフルハイブリッドの価格差は最小でも約35万円だ。N-BOX・Lの価格は155万9800円だから、35万円を加えると191万円に達する。比率に換算すると22%の値上げだ。

 エアロパーツや派手な外観を備えない標準ボディのベーシックなN-BOXが190万円を超えると、割高感が生じてしまう。売れ行きが下がってコストの低減も困難になり、さらに価格が高まったり、高品質の維持が難しくなることも考えられる。

 先に述べた通り、軽自動車にはライフラインや福祉車両の性格が伴うため、価格が上昇すると軽自動車の社会的な使命を果たせない心配も生じる。

 そこでハイブリッド化によってどの程度の価格上昇なら耐えられるかといえば、軽自動車の場合は20万円前後が上限だ。N-BOX・Lの価格は155万9800円だから、20万円を加えると約176万円になる。N-BOX・Lの4WDは、13万3100円の上乗せで169万2900円だから、これよりも少し高い程度に収まる。

 またN-BOX・Lターボは、19万9100円高まって175万8900円だ。Lターボにはサイド&カーテンエアバッグ、右側スライドドアの電動機能なども加わるから、ターボの正味価格は実質9万円に収まる。それでもフルハイブリッドを20万円の上乗せで設定できれば、2030年度燃費基準を達成できて、販売面の悪影響もどうにか抑えられる。軽自動車の使命も果たせる。

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