スズキの電動化戦略はどうなる?
ただし35万円前後のフルハイブリッドを20万円で装着するには、さまざまな工夫が求められる。まずはフルハイブリッドシステムのコスト低減だ。スズキの鈴木俊宏社長は「2025年までに電動化技術を整える」としており、現在のマイルドハイブリッドを進化させて、環境/燃費性能をフルハイブリッドに近付けることも考えられる。
そして今のスズキはトヨタと提携しており、トヨタの完全子会社になるダイハツとも間接的な繋がりを持つ。そうなると新たに軽自動車用ハイブリッドシステムを開発して、スズキとダイハツで共用することも考えられる。
かつてマツダがトヨタのハイブリッドシステム(THSII)を導入して、自社製のエンジンに装着してアクセラに搭載したことがあった。この時は相当な技術的困難が伴ったが、低コストのハイブリッドシステムを共通化することは不可能ではない。そこにホンダが加わることも考えられる。そうなれば20万円の上乗せで2030年度燃費基準をクリアすることも可能かも知れない。
エンジンやトランスミッションなどの効率向上も重要だ。エンジン排気量を800cc前後まで拡大させると、環境/燃費性能が向上して、2030年度燃費基準への対応もしやすくなる。ただし増税とセットにされたらユーザーのメリットが大幅に下がるので、税金の据え置きが大前提だ。
燃費基準の見直しも必要ではないか
燃費基準の見直しも求められる。現状の燃費基準は、車両重量と燃費数値を単純に組み合わせただけだ。そのために環境性能を向上させる王道ともいえる軽量化の努力は、まったく報われていない。
例えばN-BOXの車両重量を100kg軽くして800kgに抑えて燃費を向上させても、同程度のワゴンRと同列で判断されるだけだ。軽量化した分だけ、燃費基準の数値も引き上げられてしまう。900kgの車両重量に相当する2030年度燃費基準は、前述の通りWLTCモード燃費で27.8km/L前後だが、800kgに軽くすれば28.5km/Lが課せられてしまう。
これではメーカーも抜本的な軽量化に踏み切れない。車体の容量で判断するなど、N-BOXを軽量化して環境/燃費性能を向上させたことが、2030年度燃費基準の達成で評価される仕組みが求められる。
以上のように2030年度燃費基準にN-BOXのような軽自動車を対応させるには、さまざまな制度の見直しが必要で、それは環境問題に対する取り組み方を検証することにもつながる。
好機と捉えて、燃費基準の仕組みなどをあるべき内容に刷新させたい。この時には第一線で開発に取り組む開発者の意見を重視すべきだ。それを今後4~5年間で達成しないと軽自動車の将来も危うい。
コメント
コメントの使い方