クルマ好きならいつかはあこがれるフェラーリ。官能的ともいえるデザイン、そしてサウンドなどまさに世界から愛されるスーパーカーだ。
もちろん大富豪であればサクッと新車を買えてしまうのだが、一般的に狙うとなれば中古車だろう。
そのなかでも大人気なのが1990年代の名車F355。ひと昔前は1000万円を切っていたのに、いまやかなりの高値に。
なぜF355は高騰するのか。そして安いからってオススメできないフェラーリもあるってホントなのか。分析しました。
文/清水草一、写真/清水草一、Ferrari
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■F355の中古価格が高騰!!
フェラーリF355の中古車が高騰している。
488ピスタ(新車価格約4000万円)が高騰して平均6000万円になった! と聞いても他人事だが、F355が高騰していると聞くと、「ああ、また夢が遠のいた……」と、一抹の寂しさを覚えるクルマ好きは少なくないだろう。
F355の販売時期は、94年から99年まで。新車価格は1550万円だった。
その後、中古価格はじわじわ下降。私自身、01年にスパイダー(6MT)を1250万円で、09年にベルリネッタ(6MT)を900万円で購入したが、どちらも程度は非常に良好。つまり平均価格はこれより下だった。
09年と言えば、リーマンショックで日本が大不況に陥った年だ。あの頃は、700万円も出せば合格点のF355が買えたのだから、いま思えばあれが相場の底だった。
が、リーマン不況対策で全世界の中央銀行が大金融緩和を実施し、世界的なカネ余り現象が発生。12年からは日本もアベノミクスで追随した。中古フェラーリ相場は着実に上昇し、現在では、コンディションのいいF355(6MT)は、新車価格を上回る1700万円前後になっている。
これは、一世代新しい360モデナを完全に凌ぎ、二世代新しいF430をも超える水準だ。古いクルマのほうが相場が高いという現象は国産スポーツカーでも見られるので、いまさら驚かないが、なぜF355はこれほど人気があるのだろう。
■フェラーリたる特徴を全て備えたモデル
それは、なんとか手が届きそうなフェラーリ(届かなくなりつつありますが)の中で、最もわかりやすい魅力を備えているからだ。
トンネルバックスタイルでリトラクタブルヘッドライトを持ち、V8自然吸気エンジンはフェラーリ史上最高のソプラノを奏でる。サイズも手頃でキュートだ。これぞフェラーリ! なのである。実際に運転すれば、あのF40をも上回る官能性がある。
新しいフェラーリは、価格帯がまったく別世界。一般人は憧れすら抱かない。乗ってもあまり楽しめない。あまりにも速すぎて公道上では手も足も出ず、逆にゆっくり流せば運転が簡単すぎて手応えがない(乗らなきゃそこまで実感できませんが)。
F355は違う。最高出力は380馬力。実際には330馬力程度で、低中速トルクは薄く、現代の水準からするとあまり、というかぜんぜん速くない。少なくとも速く走らせるためには高回転までブチ回し、あの天使のソプラノを奏でさせる必要がある。それがいい。
電子デバイスはなにもない。かろうじてABSは付いているが、トラクションコントロールもスピン防止装置もない。自分でなんとかしなければならない。「自分を必要としてくれるフェラーリ」なのである。これまた乗ってみないと実感できませんが、クルマ好きならみんなそのことを知っている。
しかも少なくとも一時期、なんとか買えそうな価格帯に降りてきていた。多くの人が、F355を心の中でロックオンしたことがあるはずだ。
それこそが、F355高騰の理由なのである。
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