現在の自動化レベル3技術とは? 【自律自動運転の未来 第3回】

■少しずつ「できること」が増えていく

 では、①~③を受けHonda SENSING Eliteでは「何ができて、何ができない」のでしょうか。

 ①の「A」と「B」はHonda SENSINGに含まれる「誤発進抑制機能」との組み合わせで、いわゆるペダルの踏み間違い事故を抑制する「踏み間違い衝突軽減システム」です。具体的には低い車速域で頻発している、ドライバーのペダル踏み間違いによる接触事故を抑制します。

「C」はドライバーによる車線変更時、後側方にいる、もしくは迫り来る車両との衝突のおそれがある場合に、ディスプレイ表示と警報ブザーでドライバーの回避操作を促し、ドライバーが反応しない場合はステアリング操作を支援して衝突を抑制します。

Honda SENSING Eliteは、「これまでの安全技術」に上乗せするかたちで、さらなる新しい機能が追加される。土台も大事だし、こうやって少しずつ進化することが重要(クリックで拡大します)
Honda SENSING Eliteは、「これまでの安全技術」に上乗せするかたちで、さらなる新しい機能が追加される。土台も大事だし、こうやって少しずつ進化することが重要(クリックで拡大します)

 ②の「D、E、F」はいずれも高度運転支援技術である自動化レベル2までに相当する技術で、レベル3が機能する条件が整わなくとも作動します。ハンズオフ機能とあるように、センサーが正しく自車周囲を把握しドライバーが正面を向いて直ちに運転操作の再開ができる際にはステアリングから手を放すことができます。詳細は試乗レポートで撮影画像など交えて報告します。

「G」は国土交通省による「ドライバー異常時対応システム」の「発展型(路肩等退避型)の高速道路版のガイドライン策定」に則った制御です。

 2018年に大型観光バスへの実装がスタートしたドライバー異常時対応システムは、技術と法整備の進捗から単純停止方式→車線内停止方式と進化してきました。

 Honda SENSING Eliteを搭載したレジェンドでは、路肩等退避方式へとさらに安全性を高めました。高速道路や自動車専用道路での本線を走行中にドライバーに何らかの異常が発生した際、路肩等に十分なスペースがあるとシステムが判断した場合に車線を変更して安全に停止します。

緊急時停車支援機能。自律自動運転にはとても重要な機能
緊急時停車支援機能。自律自動運転にはとても重要な機能

「H」はHonda SENSING Eliteの真骨頂である自動化レベル3技術そのものです。自動化レベル2では手(ステアリング操作)と足(ペダル操作)の部分的な運転操作サポートが受けられましたが、レベル3技術では、これに眼(センサーによる安全確認操作)が加わります。

 しかも、これまで部分的なサポートから、システムが責任を持つ、システムが主体となった運転操作が行なわれます。ここが、あくまでも責任はドライバーにあったレベル2までの運転支援技術と大きく異なる点です。

■「できることをやる」ときにも条件がある

 このように、人の運転操作に近づいたレベル3技術ですが、システムが主体となった運転操作を実行するには条件があります。

 その条件とは大別すると以下の3項目です。

「あ」/WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において国際基準として成立した、「乗用車の自動運行装置(高速道路等における60km/h 以下の渋滞時等において作動する車線維持機能に限定した自動運転システム)」に則った制御であること。

「い」/運行設計領域(ODD/Operational Design Domain)に則った制御であること。

「う」/システムからの運転再開の要求に、ドライバーが直ちに応えて運転操作の再開ができること。

クルマに新しく「できること」が増えると、まずはそれが「できる機会」も制限される。少しずつ「できる機会」が増えていって、機能が磨かれ、技術は進歩する
クルマに新しく「できること」が増えると、まずはそれが「できる機会」も制限される。少しずつ「できる機会」が増えていって、機能が磨かれ、技術は進歩する

「あ」は、WP29で成立した国際基準そのもので、現時点での自動化レベル3技術の全容です。「少なくとも注意深く有能な運転者と同等以上のレベルの事故回避性能が必要で、運転操作引継ぎ警報を発した場合、運転者に引き継がれるまでの間は制御を継続しなければならず、運転者に引き継がれない場合はリスク最小化制御を作動させ、車両を停止させること。ドライバーモニタリングシステムの搭載。システムの作動状態記録装置の搭載。サイバーセキュリティ対策。シミュレーション試験、テストコース試験、公道試験及び書面審査を適切に組み合わせた適合性の確認」など、事細かな規定が設けられています。

「い」は、予め設定されたシステムの作動条件です。道路/地理/環境/車速など多岐に渡る条件のなかでシステムが正しく作動することが求められます。逆説的には、このODD範囲外ではシステムが正しく作動しない可能性があるのです。

「う」は、「あ」にも関連する事項です。システムからの運転再開要求に応じることが、自動化レベル3技術でもっとも重要あることが定められています。

 このようにHonda SENSING Eliteでは、複雑な取り決めをクリアしつつ、ドライバーにもシステムへの協調を求めることで自動化レベル3技術を実現しているのです。

自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】
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