現行シビック以降のここ4年ほどで登場したN-BOXやフィットのような量販車以外のホンダ車は、価格が車格や全体的な評価に対し高い傾向にあるため、販売が伸び悩んでいる(価格、販売ともにシビックタイプRは除く)。
当記事ではそう感じるホンダ車の周りのクルマたちに対する価格の印象や価格が高い理由などを考察してみた。
文/永田恵一、写真/HONDA
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■高く感じるホンダ車の価格3本勝負
●インサイトVSプリウス
空白期間もありながら現行型で3代目モデルとなるインサイトは、プリウスの直接的なライバル車となるミドルクラスのハイブリッド専用車である。
インサイトの価格はベーシックなLX(335万5000円)でも、ドアミラーの死角になりやすい斜め後方を監視するブラインドスポットモニタリング(以下BSM)やカーナビ&ETC2.0までフル装備だ。
インサイトLXに相当するプリウスは上級のAグレード(291万円)で、カーナビ&ETC2.0はオプションだ。
そのためメーカーオプションのモニターの大きなカーナビ&ETC2.0/36万1900円を付けると約327万2000円、ディーラーオプションのカーナビ/約16万円、ナビ連動ETC2.0/3万3000円、メーカーオプションのナビレディセット(バックカメラやステアリングスイッチ)を加えると約315万円となる。
いずれにしてもインサイトLXはプリウスAに対し10万円から20万円高いことになる。
さらにプリウスにはBSMがオプションでも装着できない点が大きな不満だった標準のSグレードに、ボディカラーの選択肢の制約こそあるものの、BSM、LEDフォグランプやナビレディセットが付いて275万5500円のSセーフティプラスIIという特別仕様車がある。
SセーフティプラスIIにディーラーオプションのカーナビ&ETC2.0を加えると約295万円と、これではインサイトは勝負にならない。
●オデッセイVSアルファード
オデッセイは現行型4代目モデルでかつてのエスティマに近い、スライドドアを持ちながら全高がそれほど高くないミニバンに移行し、昨年11月にフロントマスクを押し出しのあるものに変更するなどのビッグマイナーチェンジを受けた。
オデッセイのベーシックグレードとなる2.4リッターガソリンエンジンを搭載するアブソルート(8人乗りで349万5000円)に相当するアルファードは2.5リッターガソリンエンジンを搭載するXグレード(352万円)で、装備内容には大差ない。
しかし、それ以前に前述したようにアルファードの1つ下の車格となるエスティマのライバル車であり、そういった目で見ればビッグマイナーチェンジ前のベーシックグレードの価格は約300万円とリーズナブルで、そこに大きな存在意義があることもあり、それなりに売れていた。
そのオデッセイがビッグマイナーチェンジを期にミニバンの王者に君臨しているアルファードと同じ価格に値上げとなると、今のところはビッグマイナーチェンジによる新車効果でまずまず売れているようだが、いずれ販売が低迷する可能性が高いように感じる。
●N-ONE VS N-WGN
昨年11月にフルモデルチェンジされ2代目モデルとなったN-ONEは、N-WGNをベースに内外装などスペシャリティな要素を加えた軽ハイトワゴンである。
N-ONEの価格はターボエンジンを搭載するプレミアムツアラー/188万9800円、N-WGNはトップグレードのカスタムLターボホンダセンシング/169万4000円と、装備内容は同等のためN-ONEは20万円ほど高い。
この価格差に対する感じ方はそれぞれにせよ、N-ONEは是非は別としてエクステリアが先代モデルとなかなか見分けが付かないくらい変わらなかった点やスペシャリティというN-ONEのキャラクターを総合すると、N-ONEは適正価格より10万円程度高いという印象だ。
さらにN-ONEにはMTが設定されることで注目されているスポーツモデルのRSもあるが、価格は199万9800円だ。
この価格をジャンルも装備内容も違うにせよ、軽スポーツではアルトワークス/153万7800円、コンパクトカーのスポーツモデルではスイフトスポーツ/201万7400円(それぞれMT)というのを頭に置いて見ると、N-ONE RSは指名買いしか期待できないだろう。
■なぜ量販車ではないホンダ車の価格は高い?
ホンダは新任の三部社長の二代前の伊藤社長自体から北米、日本、東南アジア&太平洋、中国、南米、欧州という6極体制に移行しており、前任の八郷社長になってからはそこに6極での独立採算制が加わった。
どういうことかというとインサイトであればアメリカで販売されるインサイト、日本で販売されるインサイトそれぞれで採算を取る必要があり、大きな販売台数が期待できないモデルだと採算もあり、価格は高くなりがちとなっている。
そのため拡販を目的にライバル車よりリーズナブルな戦略的な価格とすることもできず、結果的に販売も伸び悩むという悪循環になっている。
これでは現在はインターネット見積もりも容易な時代だけに候補にも挙がりにくい、結局大幅な値引きも考えなければならないなど、開発部門、販売部門、ディーラーの士気の低下が心配になる。
■まとめ
4月に登場する次期ヴェゼルの価格は量販車ということもあり、ヤリスクロスとキックスの中間程度となりそうなのは歓迎したい情報だ。
しかし、量販車以外のホンダ車の価格が高くなりがちなことで、結局日本での販売が250万円以下のモデル中心となるのは日本での収益という意味で心配だ。
さらにホンダの社是は「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす。」であり、社是に合っていないモデルが増えているのも事実だ。
それだけにオデッセイ、ステップワゴン、フィットの初代モデルのようなコンセプトの新しさと低価格という意味でのホンダらしさに溢れ、収益にも貢献するモデルが三部社長への交代も期に再び登場することを強く期待したい。
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