■スペックでは最新のモデルSプレイドが圧倒!
日本でも価格が発表されたトリプルモーターを積んだモデルSプレイドの価格は1499万円〜となっている。最大出力は1020hpで、最大628kmの航続距離を誇り、0→100km/h加速は2.1秒(さらに短くすることもできるらしい!)、最高速度は322km/hであると発表された。
なんとも勇ましいスペックが並んでおり、なかでもゼロヒャク2.1秒という数字は最新F1マシンを上回っている。ちなみにEVハイパーカーの世界では1秒台が今や常識。恐ろしい時代になったものだ。
それはさておき、一方のタイカン。そのラインナップを検討すると、最高性能を誇るターボSでもそのスペックはモデルSプレイドにまるで歯が立たない。
最大出力はローンチコントロール時のオーバーブーストで761hpであり、航続距離は412km、ゼロヒャク2.8秒で最高速度は260km/hに制限されている。それでいて価格はモデルSプレイドより1000万円も高い。
同じ価格帯で比較すると、タイカンのスペックはさらに見劣りしてしまう。1448万1000円のタイカン4Sで、主要スペックを同じ順に並べると、435hp、約400km、4.0秒、250km/hだ。数字だけで判断すれば、誰だってモデルSを選んでしまいそうだ。
たとえポルシェという最強のブランド力を持ってしても、これだけの価格差とスペック差を埋めることはどうにも難しい。
さらに専用充電設備であるスーパーチャージャーの存在など、EV関連スペックまで比較し始めると、モデルS購入を諦めさせることはさらに難しく思えてくる。
だからこそ、タイカンはモデルSをライバル視していなかったと筆者は思うのだ。
■他車にスペックで勝つよりもポルシェらしいEVであることが重要
クルマの魅力を決める要素はいくつかある。
仮に今、テスラとポルシェのブランド力が(未来への期待から)あえて等しい(知名度は確かにそうだろう)と考えた場合、残るは価格・スペック・デザインで、デザインは好みの範疇だから一旦脇に置いたとすると、残る二つでタイカンはモデルSに負けているというのが前半の内容だった。
では、タイカンは結局、ライバル視しないことでモデルSとの勝負を避けたのか。それもまた違うと思う。
結論から言うとポルシェはモデルSにわかりやすい数字で勝つEVサルーンを作るつもりなどハナから毛頭なくて、ただただEVのポルシェを作りたかっただけであった。
結果、現時点で到達したベストミックスが、あのスペックであり、あの価格のタイカンたちであった。それをテスラと比較すること自体、ナンセンスだというのがポルシェの考えではないだろうか。
■ポルシェはEVであってもポルシェでなくてはならない
要するに、911やボクスター&ケイマンのようにとまでは言わずとも、最低でもパナメーラと同じ程度にはポルシェのように走り、振る舞い、評価されるEVでなければならなかった。実際には最新の911に勝るとも劣らぬ総合パフォーマンスを発揮するクルマにタイカンは仕上がっている。
自動車としての総合パフォーマンスにおいて、ポルシェの範疇に収まらないEVなど必要なかったのだ。たとえそれがゼロヒャク2秒以下で走れたとしても、パイロンスラロームの途中で姿勢を崩してしまうクルマなどポルシェでない。
2、3度程度のフル加速やフル制動で瑕疵を曝け出すようなクルマもまたポルシェではない。
街中での乗り味から高速クルージングの信頼感まで、すべてがポルシェでなければならない。わかりやすい数字だけで比較できない哲学が、それこそ星の数ほど散りばめられている。それがポルシェであると言うことなのだ。
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