走りだけでなくコスト面でも大きな可能性秘めるRR
VWは大手自動車メーカーの中で電動化にもっとも前のめりで、2025年に年間150万台のBEVを生産する計画を発表している。そのために“MEB”というBEV専用プラットフォームを開発。 ID.3は、その第一弾となる重要なニューモデルだ。
一般的に、後輪駆動のメリットとして、ステアフィールや回頭性の良さや、後輪駆動ならではの軽快なハンドリングなどが挙げられるが、社運をかけた最重要モデルで、VWがそんな「お遊び」を優先するとは思えない。
BEV専用プラットフォームをゼロから開発するにあたり、VWはあらゆる可能性を検討したはずだが、おそらく決め手となったのはMEBプラットフォームから派生するバリエーションをどう効率的に造るかという問題。
BEV時代になってもSUVが売れ筋車種となるのは変わらない。となれば、そこには2モーター4WDのバリエーションが必須。MEBプラットフォームはそれを前提に開発されている。
では、そのMEBプラットフォームで2WDモデルを造るとして、前後どっちのモーターを残すべきか。おそらく、コスト的にもっとも有利だったのがリアモーター後輪駆動レイアウト。そう考えるのが自然だろう。
エンジン車の場合、4WDのバリエーションは「足し算」で造られていたが、BEVの場合は2モーター4WDからの「引き算」で造る。あくまでぼくの憶測だが、VWはフロントモーターを引き算する方がコスト的に有利と判断したのではなかろうか。
いっぽう、よりスモールサイズで2モーター4WDのバリエーションを想定しないBEVの場合、シティコミュータ的な使い方を考慮してRRを選ぶケースもある。
そういうユースケースでは、小回りのきく回転半径の小ささが重要だし、軽快な走りも魅力となり得る。また、衝突安全性の点でフロントにモーターを置きたくないという事情もあるかもしれない。
このタイプの代表はホンダeだが、設計者が「使用するモーターがクラリティ用のパワフルなものなので、走りがスポーティな後輪駆動を選んだ」と述べているとおり、走りのキャラクター造りを意識してのRR選択だったようだ。
もうひとつ、スモールBEVで興味深いのは、将来軽自動車のBEVが増えてきた時に、はたしてFFとRRどちらが主流になるか。
もしRRが大勢を占めたら、元祖BEVであるi-MiEVの先見の明が再評価されるよねぇ。
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