現代では消滅寸前だったリアエンジン・後輪駆動の「RR」車が、にわかに復権気配!?
2020年10月、ホンダ初の量産電気自動車「ホンダe」が発売された。同車初という話題性もさることながら、驚かされたのはその駆動方式。なんとリアにモーターを搭載し、後輪を駆動するRRを採用してきたのだ。
乗用車の駆動方式は長年、前輪駆動(FF)を採用する乗用車が圧倒的多数を占めている。その一方で、かつてフィアット 500(チンクェチェント)やフォルクスワーゲン ビートル、スバル360など大衆車で採用されたものの、現在ではすっかり廃れてしまったRR車が、なぜ今ふたたび増えているのか? 復権の可能性に迫る。
文/鈴木直也
写真/HONDA、VW、BMW、Renault、Daimler、Porsche、平野学、編集部
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モーターをリアに置く後輪駆動のEVがトレンド化
最近の電気自動車(BEV)は、モーターをリアに置く後輪駆動が増えている。ホンダe、フォルクスワーゲン(VW)のID.3がこのレイアウトで話題になったし、BMW i3も同じ。元祖BEVといっていい三菱i-MiEVも後輪駆動だった。
そうそう、テスラのモデルSやモデル3も、ベーシックな1モーター2WD仕様は後輪駆動だ。これからのBEV時代、これはひとつのトレンドだと思う。
自動車を設計する基本は、限られたスペースにさまざまな要素をどうやって詰め込むか、いわゆるパッケージングの勝負。これまでは、いちばん嵩張るエンジンをどこに載せるかで基本レイアウトが決まっていたわけで、横置きFFが圧倒的多数なのは、それが一番シンプル・コンパクトでコストも安くすむからにほかならない。
逆に、エンジン車で後輪を駆動しようとすると面倒臭い。エンジンを縦置きにするか、あるいはミッドエンジンやリアエンジンを選択するか。いずれにせよ、スペース効率の悪いレイアウトを採らざるを得ない。必然的にコストも高くつく。
なぜバッテリーEVではRRを選択しやすい?
いっぽう、BEVのパッケージングはエンジン車とはまったく条件が異なる。BEVでいちばんスペースを食う部品は、いうまでもなくバッテリーだが、これは床下に置く以外に選択肢がない。
リチウムイオン電池の体積あたりエネルギー密度は、現在実用に供されているもので最高500Wh/Lほどだが、制御系、冷却系、コンテナなどを含めると、バッテリー容量50kW/hクラスで体積200〜300Lのスペースを必要とする。
体積エネルギー密度がいまの5倍くらいになればレイアウトの自由度が広がりそうだが、リチウムイオン電池だと今の2倍程度が限界といわれている。床下バッテリーというレイアウトは、とうぶんBEVパッケージングのスタンダードであり続けるだろう。
ただ、バッテリーの床下配置が必然的に決まると、BEVはそれ以外の自由度が圧倒的に高い。
エンジンに比べると電気モーターははるかにコンパクトだし、吸気系、冷却系、排気系、燃料系など、エンジン車では必須の補機類もバッサリ省略できる。設計者の意図次第で、フロントモーターのFF、リアモーターのRR、あるいは2モーターの4WD、それらを自由に選択できるわけだ。
そんな前提のもと、冒頭に挙げたクルマがリアモーター・後輪駆動(RR)を選んだ理由だが、筆者がもっとも注目しているのは、VWのID.3がRRを選んだことだ。
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