アイドリングストップはバッテリーの寿命をどれだけ縮めるのか

1.5倍高価で、2倍の交換が必要

 アイドリングストップが機能し、エンジンが停止すると、エアコンやカーナビ、最近だと、ドライブレコーダーやデジタルメーターなどへ電力供給はすべて、バッテリーが受け持つ。

 さらに、近年はアイドリングストップと同時に充電制御機能が付いていることも多い。「充電制御」とは、走行状況やバッテリーの状態によって、オルタネータの発電を短時間に制御し、エンジンの負荷を軽減して燃費向上を図った車両のこと。

 ひと昔前のクルマでは、カーバッテリーが満充電の状態でも、オルタネータが稼動し続けていたため電気が無駄になり、かつ、エンジンにも負荷が掛かりっ放しとなり、燃費悪化につながっていた。充電制御機能には、時間でより多く充電(クイックチャージ)できる性能が求められるため、これに対応できるバッテリーは高価だ。

最近流行のデジタルメーターも電力を消費する一要因 写真はホンダフィットのマルチインフォメーション・ディスプレー
最近流行のデジタルメーターも電力を消費する一要因 写真はホンダフィットのマルチインフォメーション・ディスプレー

 また、アイドリングストップによってエンジンを停止したあと、エンジンを再始動する際はバッテリーに大きな負荷がかかる(大電流を放電する)ため、アイドリングストップが頻繁に作動するほどに劣化は進みやすい。このためか、バッテリー交換の推奨サイクルは大幅に縮まっている。

 アイドリングストップ非装着車のバッテリー交換サイクルは通常「3~4年に1度」という程度。しかし、アイドリングストップ車は、多くの場合「18カ月または24カ月」と、おおよそ、これまでの「2分の1」程度の寿命となってしまったのだ。

 実は、「そんなに短いわけではないでしょう」と筆者も思っていた。だが、いま乗っているクリーンディーゼル車で、新車登録1年半後にアイドリングストップが全く効かなくなった。原因は「バッテリーの消耗」。

 担当者によると、劣化したバッテリーだと、アイドリング始動に必要な充電量に至らず、アイドリングストップに入らない制御になっているという。ちなみに交換用バッテリーの価格は約5万円、メーカー保証の期間内であったため無料交換で済んだが、2年おきにこの金額はさすがに堪える。バッテリー交換後は、アイドリングストップが順調に働くようになった。

最近ではネットでバッテリーを安く手に入れ、自分で交換する方も多いが、クルマ側の設定リセットも併せて行う車種もあり、面倒な面もある(PHOTO:yurisyan@写真AC)
最近ではネットでバッテリーを安く手に入れ、自分で交換する方も多いが、クルマ側の設定リセットも併せて行う車種もあり、面倒な面もある(PHOTO:yurisyan@写真AC)

 車種やバッテリーサイズによって、かかる費用は異なるが、一般的には、アイドリングストップ非装着車用のバッテリーよりも、アイドリングストップ車用のバッテリーは、1.5倍ほど高価であり、さらに、2分の1のサイクルで交換しなければならない、つまり、アイドリングストップ非装着の場合よりも、バッテリーにかかる費用はざっくり3倍にはなる、ということだ。

CO2抑制に絶大な効果、でも…

 「環境負荷を減らす」ということで始まったアイドリングストップ機能。燃費への貢献はわずかではあるが、ガソリン車ではCO2が44%も低減する、という試算もあり、排ガス抑制には一定の効果がある、とされている。しかし、高性能なバッテリーが速いサイクルで交換が必要となるというのは環境負荷となることも考えられ、アイドリングストップが正義とは言い切れない側面もあることも事実だ。

アイドリングストップは燃費への貢献はわずかではあるが、ガソリン車ではCO2が44%も低減する、という試算もある(PHOTO:ハートムーン@写真AC)
アイドリングストップは燃費への貢献はわずかではあるが、ガソリン車ではCO2が44%も低減する、という試算もある(PHOTO:ハートムーン@写真AC)

 今後、アイドリングストップは消えていくのか、それともこのままクルマの必須装備として残るのか。メーカー各社とも頭を悩ませているところなのかもしれない。

【画像ギャラリー】今後はこの流れ!? それともこれで終わり!? アイドリングストップ非装着のクルマをギャラリーでチェック!!

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