気になる謎のアップルカー! 米アップルは本気でクルマを作る気なのか?

■アップルとクルマとの関係

カーオーディオをiPhoneとの連携させて使えるApple CarPlay(Chinnapong@AdobeStock)
カーオーディオをiPhoneとの連携させて使えるApple CarPlay(Chinnapong@AdobeStock)

 では、改めてアップルがなぜクルマの領域に進出する動きを見せているのか、その背景からみていきたい。

 2021年時点で、日本人にとってアップルのクルマとの関係をはっきりイメージできないのではないだろうか?

 アップルといえば、まずiPhoneを思い浮かべるひとが多い。

 そのiPhoneをクルマで使う方法として、「Apple CarPlay」があるのだが、はっきりいって日本ではあまり使われていない。

 例えば、トヨタがインフォテインメント車載器で標準化を目指すディスプレイオーディオにもCarPlayが装備されているのだが、「若い世代を含めて、日本では欧米と比べCarPlayの認知度は高くなく、実際のCarPlayの使用率も高くない」(同分野のトヨタ関係者)という状況だ。

 やはり日本では、カーナビの普及が世界のなかで先んじたことで、車載ナビに対する依存度がいまだに高い。また、若い世代では車載ナビではなくiPhoneのナビ機能を使う人が多いが、それをCarPlayを通じて車載器と連動させるという発想に結び付きにくいようだ。

 そもそも、CarPlayというアップルの発想は、iPhoneの普及によって走行中にナビ、SNS、電話、音楽視聴などの操作をする人が増えてしまい、安全な運転に支障をきたすことへの配慮であった。

 さらに、もうひとつのポイントは、iPhoneの車内への「ブロードイン(持ち込み)」という考え方だ。これは、日常生活でiPhoneを多用化することが人々にとって当たり前になっていくなかで、クルマの運転中はiPhoneとユーザーとの関係が途切れてしまうことを回避する、ということ。

 車内に「ブロードイン」してCarPlayと接続することで、クルマ全体がiPhone化するという発想だ。2013年のアップル年次開発者会議で「iOS in the car」として公表され、2014年にCarPlayとして量産された。

 その結果として、ユーザーの移動に関するデータが地図情報と連動し、いわゆるビックデータとしてアップルの貴重な資産となるのだ。

 こうしたビックデータ最優先のビジネスモデルのなかで、そこから一歩先に踏み出したのが、クルマ本体というハードウエア分野への進出計画。

 それが、プロジェクト・タイタンである。

■アップルはアップルカーを自社生産しない?

2010年代後半、ミニバンを使った公道実験車がみかけられたアップルの本拠地のあるクパチーノ市(Newport Coast Media@AdobeStock)
2010年代後半、ミニバンを使った公道実験車がみかけられたアップルの本拠地のあるクパチーノ市(Newport Coast Media@AdobeStock)

 プロジェクト・タイタンが表舞台に出てきたのは2010年代後半だ。

 シリコンバレーの各種IT系企業や、自動車メーカーの電動化技術者がアップルにヘッドハンティングされ、クライスラーのミニバンを使った公道実験車がアップルの本拠地であるクパチーノ市や、そこからほど近いスタンフォード大学があるパロアルト市などの周辺で目撃されるようになった。

 同時期に、グーグル(現在の親会社はアルファベット)も、いわゆるグーグルカーである自動運転車で公道実験をシリコンバレー周辺で活発に行うようになった。

 こうしたアップルカーにしても、グーグルカーにしても、アップルもグーグルも自社で完成車を仕立てるという発想はない。そもそも、彼らのビジネスモデルは、事実上の自社工場を所有しない、ファブレス企業なのだから。

 そのためアップルカーでは、研究開発と商品企画をアップルが行い、部品製造と車両最終組立てを既存の自動車メーカーに依頼する可能性が高い。

 依頼相手を探すなかで、各種報道のようなメーカー名が出てきているのだろう。

 アップルとしては、アップルカーでもiPhoneのように、アップル独自の世界感でのブランド戦略を進めながら、そこから得られるビックデータを活用した、次のビジネスに結びつけたいところである。

 どの自動車メーカーといつ手を組むのか、アップルの今後の動きを注視したい。

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