■より先進的なイメージの「AWD」
ところで、スバルでは4輪駆動モデルを「AWD」と表記しており、日本ではポピュラーな「4WD」を使っていません。けれどもAWDモデル初の量産車となったレオーネには4WDとグレード名にも書かれているのです。
乗用車型4輪駆動モデルがポピュラーになったのはレオーネがきっかけです。そのモデルのグレード名に4WDが使われていたのですから、そもそも4WDという言い方を定着させたのはスバルではないか、という疑惑(?)が浮かび上がってきます。
2000年に入るとスバルは4WDという言葉を使いたがらなくなります。レガシィではスタイリッシュになった4代目のBP/BL型レガシィの登場、インプレッサでは初代(GC8型)から2代目(GDB型)にモデルチェンジした時期と一致します。
シンメトリカル4WDもAWDに変わっています。ちょうどその頃、スバル関係者から4WDにはどうしても土のイメージが付きまとうので洗練されたイメージのAWDを使いたいという声を聞いた覚えがあります。
そもそも4WDとAWDは同じ意味で、もっと言えば、4WDという言葉自体スバルが定着させたという疑惑(?)さえあるのです。つまり、スバルのAWDが特別なのではなく、スバルの作るAWD自体がほかのメーカーとは一線を画するような作り込みがなされているということなのです。
4WD,AWDの表記の違いではなく、スバルの作るAWD自体に高性能の秘密があるということです。
■「AWD」は「4WD」よりつくり込んでいる。という意気込み
では、スバルのAWDにどこが優れているのでしょうか。
縦置きエンジンでエンジンの後ろにトランスミッションがあるというレイアウトで、比較的重量バランスがいいこと。またスバルが謳っているように左右対称の駆動方式であるシンメトリカルAWDになっていることで、四輪駆動レイアウトの素性として素直な操縦性を持っていることが挙げられます。
もうひとつ興味深いのは、スバルには現在①アクティブトルクスプリットAWD、②VTD-AWD、③DCCD方式AWD、それに今は搭載している車種がありませんが、④ビスカスLSD付きセンターデフ方式AWDの4タイプがあります。
ところがそれぞれに独特の操縦性を持っているわけではなく、どれに乗ってもほぼ同じ特性になっているということです。
もちろん厳密に突き詰めていけば違いはあるのですが、例えば氷盤路で1本のパイロンを回るようにドリフトさせてみると、内側にハンドルを切ったまま4輪ドリフト状態になるんです。
つまり、そういう操縦性になるようにセッティングしているということなんです。AWD販売比率98%というだけあって、意図的に操縦性を作り込んでいるわけです。そこがスバルのAWDの本当に優れたところなのだろうと思います。
■電動化時代のAWDはどうなるのか
では、これから電動化が進むなかでスバルのAWDは優位性を保てるのか? ということですが、これはいまのところ何とも言えないと思います。
有利な点は4WDの操縦性について膨大な経験とノウハウを持っていることです。その一方で、現在スバルが持っているハイブリッドシステムはe-BOXERというCVTの出力軸に直接モーターアシストを加えるタイプのマイルドハイブリッドのみです。今後の可能性は正直言って未知数です。
ただ期待が持てるのは、スバルの中期計画でBEV(バッテリ-EV)とハイブリッドで販売比率50%を実現するとして積極的に電動化に取り組む姿勢を見せていること。そして来年あたりに発売される(と噂される)ストロングハイブリッドは、e-BOXERの進化版となりそうなことです。
詳細は不明ですが、前後のホイールをカップリング機構を挟んで駆動する直結方式が採用されるといいますから、直結4WDならではの安定性やトラクション性能は期待できそうです。
仮にカップリング機構にWRXに採用されているDCCD(ドライバ・コントロール・センター・デファレンシャル)の前後駆動配分に近い働きをするモーターユニットが採用されると、ハイブリッド、あるいはプラグインハイブリッド版WRXの登場まで可能性が広がってくれます。
スバルならやってくれるんじゃないかという期待感もあり、今後の電動化からも目が離せません。
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