ここ数年でエンジンは劇的な進化を遂げている。わずか1%熱効率を改善するために、どれだけの技術者が知恵を絞り、試行錯誤を繰り返し、エンジンを熟成させてきたか。
また、ガソリンエンジンは火花点火という常識を覆し、圧縮着火をついにモノにしたマツダのSPCCI(SKYACTIV-Xで採用)……。エンジンの魅力はこれまで以上にないほど奥深く高まっていた。
それにも関わらず、欧州メーカーがEV化を打ち出したと同時に、欧州では純エンジン車販売禁止政策を打ち出してきたことでエンジンの未来は大分雲行きが怪しくなっているように見える。
日本企業と合弁しても、なかなかエンジン技術をモノにできない中国も、補助金をバラまいてEVメーカーを続々と誕生させ、エンジン車包囲網を構築してきている(それもちょっとボロが出てきているが)。
EVのもつ可能性の素晴らしさ、それを否定するつもりなど毛頭ない。けれどもクルマとしてはEVだけにするのはリスクがあり過ぎるし、後述のとおり、そもそも無理があるのだ。
ハイブリッド車も必要であればエンジンを利用することに変わりないのだが、どうしてもエンジンは脇役にされつつある。
けれどもエンジンだけでもカーボンニュートラルは実現可能なのだ。どういうことか、ここで明らかにすると共にエンジンに未来はないのか、ここで考えてみたい。
文/高根英幸 写真/MAZDA、Audi、TOYOTA
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水素を燃料電池だけでなくエンジンでも利用する?
燃料電池は試行錯誤の末、純水素を搭載し、空気中の酸素と反応させることで発電している。水素だけを供給することにより発電効率の高さを追求できた面も大きいが、水素を供給できるのであれば、水素をエンジンの燃料として利用するという手もある。
なぜなら自動車メーカーは1990年代、水素を燃料とするエンジンの開発に力を入れていた時期があったからだ。
燃料電池が水しか排出しないのと同様、内燃機関でも水素を燃料とすれば、酸素と結び付いても排出されるのは水だけだ(厳密には爆発によってNOxも発生する)。
しかし、水素は無尽蔵にあると言いながらも、実は水素を作り出すためには別のエネルギーが要る。つまり水素はエネルギーではなく、エネルギーを貯蔵する手段に過ぎないと考えた方がいい。
しかもエンジンで燃焼するより、燃料電池の方がずっと効率が高いので、わざわざ燃やす必要はないのが現代の技術レベル。
水素をほとんどタダのように使えるようになれば、水素燃料エンジンも使えるようになるかもしれないが、それまでエンジンが生き延びられる保証はない。
よって技術的にはアリでも、水素燃料エンジンはナシだろう。それよりもバイオ燃料の方が可能性は高そうだ。
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