実はエンジンでも脱炭素が可能!? EV化だけではないシナリオとは

バイオ燃料と「eガス」に高い可能性アリ!

マツダは、「ひろしま “Your Green Fuel” プロジェクト」にて、次世代バイオディーゼル燃料の原料製造から利用に至るまでのバリューチェーンを構築した
マツダは、「ひろしま “Your Green Fuel” プロジェクト」にて、次世代バイオディーゼル燃料の原料製造から利用に至るまでのバリューチェーンを構築した

 バイオ燃料は現在でも幅広く使われている。ブラジルではサトウキビ由来のアルコールがクルマやバイクの燃料として用いられてきたし、欧州ではバイオアルコールを85%まで混ぜたガソリンも販売されている。日本のガソリンにもMTBEという名の添加剤としてほぼ同じような成分が入っているのだ。

 アルコールの作り方にもさまざまあるが、クルマの燃料として使うなら燃焼させるとCO2を発生させるが、植物由来の燃料であれば、そこに含まれる炭素は空気中のCO2から取り込んだものだから、CO2は増えないということになる。これがカーボンニュートラル、という考え方だ。

 バイオ燃料には大きく分けて植物を発酵させて作るアルコールと、微細藻類が作る油を搾って精製する燃料がある。

 この微細藻類も様々な研究機関や企業が開発中で、世界中で2000種類はあると言われる微細藻類の中から、最も効率良く油を作り出す種を見つけて、効率の良い培養の方法を探っている段階だ。

 藻が作り出すのは油だけでなく、ビタミンやミネラルなどさまざまな成分を生成して蓄えている。そのため化粧品や栄養補助食品などの原料にもなるし、絞った後の残渣は肥料や飼料、燃料としても利用できるなど、燃料以外にもメリットはいろいろある。

 食用廃油からバイオ燃料を作り出すこともできるけれど、これはシステム上絶対量が限られるから、資源の再利用という点ではありだけど、都市レベルでの使用燃料を賄うのは難しい。一般家庭からも回収するような仕組みにするには、そもそもコストが見合わないからだ。

 ただし、バイオ燃料をどれだけ増やそうとしても、限界があるのも事実。植物や微細藻類を培養する巨大な施設をいくつも作れば、それはやがて農地(海洋性の藻であれば海上でも培養できるが)を圧迫することになり、結局穀物由来のアルコールと同じ結果になってしまう。

 また、一酸化炭素などから科学的に作り出す合成燃料の「eガス」も研究開発が続けられているが、人工的に燃料を作る技術は確立されても、生成のためにエネルギーを必要とするのであれば、そのエネルギー(つまり電気)は何で作り、コストはどうなるのか、という話になるだろう。

 eガスに近いものであるが、アンモニアを利用する手もある。アンモニアはそもそも水素キャリア(水素を運ぶための媒体)としての利用が考えられていた。水素を圧縮して運ぶより、アンモニアとして運んで水素を取り出した方が安全、という考えからだ。

「eガス」とは、一酸化炭素などから科学的に作り出す合成燃料のこと。Audi e-gass projectのイメージ図では、 eガス生成から提供までの流れがかかれている
「eガス」とは、一酸化炭素などから科学的に作り出す合成燃料のこと。Audi e-gass projectのイメージ図では、 eガス生成から提供までの流れがかかれている

 しかし、最近ではアンモニアを直接燃料電池の燃料として使う、あるいは燃焼させて熱エネルギーに変換する研究も進んでいる。ただ、攻撃性の高いアンモニアに耐える機械部分のコストや万が一の漏洩リスクを考えると、乗用車に用いるのは難しそうだ。

 クルマ1台のレベルで見れば、エンジン車でカーボンニュートラルを実現するのは難しいことじゃない。けれどもそもそも、どれも1種類の燃料だけで、世界中のクルマを走らせるのは不可能なのだ。

 じゃあやっぱりEVに頼るしかないじゃないか、という声が聞こえてきそうだが、そう簡単に解決する問題ではないのである。

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