■アベンシス
1998年、欧州専売車種として初代アベンシスが登場する。2代目からは日本市場にも導入された。イギリスで生産されたクルマが、日本に送られてくるという、ちょっと変わったトヨタ車である。
どっしりとしたボディと、硬めのサスペンションチューニングが、欧州輸入車のような雰囲気を醸し出し、話題性の高いクルマであった。
話題性はあったものの、実際に取り扱うと、他のトヨタ車とは違う部分に、売り手側が戸惑うことになる。
イギリス製造のため、リードタイムが長くなり、新車の納期が遅い。また、ブレーキパットがあっという間になくなってしまい(高摩擦ブレーキパットのため)、トヨタ車に慣れたオーナーが購入すると、納車後に不満を言われることもあった。
話題にはなるものの、セールス側としては、積極的に販売しようという気にならず、結果として販売台数が伸びなかったクルマだ。2018年に国内での販売を終了し、イギリスでの生産も同年終了する。
■ステーションワゴン(クラウンエステート、マークXジオ等)
最後は、特定のクルマに絞れることができない。商談やオーナーとの会話の中で、よく話題のぼるが、実際に販売が奮わなかったトヨタ車は「ステーションワゴン」の大半が該当する。
クラウンエステート、マークXジオ(マークIIブリッド)、ビスタアルデオ、カムリグラシアのような、セダンから派生したステーションワゴンの名前は、生産が終了して10年以上の年月が経過しても、販売現場でよく耳にする。また、マイナーなクルマではあるが、オーパの名前が挙がることもある。
もちろん、すべて絶版車であり、新車を契約することはできない。中古車で探すにしても、年式が古く、トヨタ認定中古車の基準を満たすものが少ないため、実際に、筆者が販売したのも数台だけだ。
しかし、上記車種にカルディナを加えた、トヨタのステーションワゴンは、よくSUVやミニバンの商談中に名前が挙がる。その話の多くは、「またあんなクルマを作ってくれないかなぁ」と、ステーションワゴンを熱望する声である。
現在、新車で購入できるトヨタのステーションワゴンは、カローラツーリングだけだ。もう少し選択肢が増えることを、筆者も切に願う。
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人気があり支持を受けるのは売れるクルマであるが、好かれるクルマには直結しない。どんなに不格好でも、機能的に劣っていても、人々の心の隙間にピタリとはまるクルマたち。そういうクルマが好かれるクルマなのかなと筆者は思う。
メーカーとしては販売台数を競い、利益を上げるなかで、不要なお荷物となったクルマもあるかもしれない。それでも人々の記憶に残り、いつまでも話題にあがるクルマたち。彼らに愛おしさを感じてしまうのは、私だけだろうか。
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