■販売面で目立つのはN-BOXだが、その他のクラスでも比較的堅調
登録車では、昨年ベスト5位以内にあったフィットが、今年に入って1月の10位、2月の12位と大きく順位を下げている。昨年と今年の明暗の差には、やはり懸念を覚える印象がある。だがその販売台数は、1月に5889台、2月に5782台と比較的安定している。
だが1位を快走するトヨタのヤリスに比べ半分以下であり、ヤリス人気にフィットが負けはじめたのではないかとの印象もあるだろう。
しかし、その中身をみると、たとえば1月のヤリスの1万8516台のうち、コンパクトハッチのヤリスの台数は約8180台で、残りはコンパクトSUV(スポーツ多目的車)であるヤリスクロスの約9350台とスポーツモデルであるGRヤリスの約980台という内訳になる。
いわゆるコンパクトハッチバック車のヤリスの販売台数は、ヤリスシリーズとして合計されている統計に出てくる数の44%ほどであるのだ。
そのうえで、トヨタの販売店数は5000店を超えるが、ホンダの販売店は2000店強と半分に満たない。その店舗数で頑張ったフィットの数字が5800台前後なのである。これを2倍すれば、1万1600台になる。
また、2月の販売台数ランキングではフィットより上の順位にフリードがあり、新型フィットとの相乗効果で、5年前にモデルチェンジしたコンパクトワゴン車が健闘しているのだ。この2台を合わせると1万1710台となり、2位のルーミーに迫る。
こうした数字合わせが、正当な比較になるかどうかは議論の余地はある。けれども、販売店の売り上げという視点で新車販売台数を追うなら、ホンダは健闘していると思うのだ。
さらに、新型が4月22日発表したコンパクトSUVのヴェゼルは、モデル末期の2月でも2568台(25位)とけっこう売れている。これは、30位のトヨタCH-Rを上回っている。CH-Rより先に売り出したヴェゼルの底堅さも伝わる。
ミニバンでは、トヨタ ヴォクシーや日産 セレナにはおよばないが、ステップワゴンも4713台売れているし、競合車がすべて消えたオデッセイが、マイナーチェンジによってそれまでの3桁から4桁へ、多少なりとも台数を伸ばしている。
目立つのは軽自動車のN-BOXばかりで偏っているのは事実だが、数字を、以上のように読み解いてゆけば、ホンダの危機を疑うような低迷ぶりではないというのが、私の考えだ。
■創業以来、いつの時代も心が弾むような話題を提供してくれた
それでも、ホンダに対する心配や懸念の気持ちが浮かぶのは、ほかの自動車メーカーとは違うと感じるホンダへの大きな期待があるからではないか。
過去を振り返ると、1948年に創業(本田技術研究所は1946年に設立)したホンダは11年後に英国のマン島TTレースに出場し、1961年に勝利する。続いてF1グランプリにも挑戦し、1965年に初優勝した。
1960年代に四輪事業へ進出した際は、T360とS500という、軽トラックとスポーツカーであった。1970年代には、世界で最初に排出ガス規制をCVCC(複合渦流調整燃焼方式)で達成し、世界の自動車メーカーが提携や技術供与を依頼してきた。
1980年代には、日本の自動車メーカーとして最初に米国に現地工場を設けた。その布石は、1959年にスーパーカブで米国市場進出をはかったことにはじまる。
1990年代は、オデッセイをはじめとするクリエイティブムーバーによって国内市場を席巻した。くわえて1990年には、ミドシップスポーツカーのNSXを発売している。
ホンダを取り巻く話題は綺羅星のごとく、消費者の心を魅了してきたのだ。心を踊らす事業展開を期待するあまり、現状に満足しきれない思いもつのるのだろう。ホンダ強しという元気のいい姿を待望するうえで、今後への期待があるのは間違いない。
コメント
コメントの使い方