都市高速などを爆走するイメージが強いプロボックス。「納期とクレームのツインターボ」なんて名言(!?)もあるほど、営業マンの頼もしい相棒となっている。しかしプロボックス以外にも日本には商用バンはある。
日産のADバン(現在のNV150)がそれだ。だが本来好敵手であるべきADバンは公道での走行数などを見る限りあまり元気がなく、市場はプロボックス独壇場といった様相を呈している。
なぜここまでの差が生まれたのか。今回はコスパや実用性には超厳しい渡辺陽一郎さんに聞いてみた。
文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、日産
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■車種が大幅に減ったボンネットバンはプロボックスの一人勝ち
街中で見かける商用バンには、軽ワンボックスバン(キャブオーバーバン)のエブリイ、ハイゼットカーゴ、そのOEM車が多い。軽ワンボックスバンは、2020年に17万台以上を販売しており、商用車全体に占める比率も高い。
その次はハイエースやキャラバンなど、小型/普通車サイズのワンボックスバンだが、ボンネットを備えたワゴン風の商用バンも人気が根強い。
ボンネットを備えた商用バンは、昔はライトバンと呼ばれて各メーカーが用意したが、今は車種数が大幅に減った。
トヨタプロボックス、日産NV150AD、プロボックスのOEM車になるマツダファミリアバンのみだ。プロボックスの姉妹車だったトヨタサクシードは、トヨタのすべての販売店が全車を扱う体制に移行したことで廃止された。
そうなるとボンネットバンは、実質的にプロボックスとNV150ADに集約される。特に街中で頻繁に見かけるのはプロボックスだ。プロボックスとNV150ADは、似通ったクルマに見えるが、どのような違いで売れ行きに差が生じているのか。
■プロボックスが勝っている理由
車両自体に関しては、まずバリエーションが異なる。プロボックスのエンジンは、直列4気筒の1.3Lと1.5Lのノーマルタイプが基本で、2018年には1.5Lをベースにしたハイブリッドも加えた。4WDは1.5Lノーマルエンジン車に用意される。
対するNV150ADのエンジンは、2WDは1.5Lで4WDは1.6Lだ。ハイブリッドは設定されない。
プロボックスは1.3Lエンジンの設定により、価格の安さを重視するユーザーに対応した。1.3Lの2WD・DXは、価格が139万9200円だ。NV150ADで最も安い2WD・DXは158万1800円だから、プロボックスのDXは約19万円下まわる。
ちなみにプロボックスの場合、DXやGLなど複数のグレードに、1.3Lと1.5Lが両方とも用意される。
製造コストでいえば、排気量が200cc小さいだけでは、1.3Lは価格をほとんど下げられない。それでもプロボックスの1.3Lは、アイドリングストップを省き、販売店の粗利も安く抑えることで、価格を1.5Lに比べて17万9300円引き下げた。
そして1.3Lを搭載するプロボックスDXは、価格が140万円を下まわるので、エブリイジョインターボ(139万8100円)やハイゼットカーゴクルーズターボSAIII(139万7000円)など、軽ワンボックスバンのターボ車と同等になる。
従って軽ワンボックスバンのユーザーが、ノーマルエンジンにパワー不足を感じてターボ車を検討した時、排気量が約2倍に増えるプロボックスも同程度の価格で選べるわけだ。
ヤリスで最も安価な1Lエンジンを搭載するX・Bパッケージ(139万5000円)などと併せて、1.3LのプロボックスDXも社用車として購入しやすい。NV150ADのDXは、前述の158万1800円だから、価格の印象はかなり違う。
またプロボックスに1.5Lエンジンを搭載したDX(157万8500円)も、NV150AD・DX(158万1800円)に比べて若干安い。
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