常套句(じょうとうく)。ある場面にいつも決まって使う文句、言葉。決まり文句。決まりきった、またはありふれたやり方のこと。「常套の手法」「常套手段」などという。
たとえば上の場面なら「急いでいたんですか〜?」、社会人なら別れ際の「今度お酒飲みに行きましょうよ」。これらですよ。常套句(決まり文句)の典型だが、お酒飲みにいったためしがない(笑)、という人も多いのでは? その常套句、クルマ業界にも数多く転がっている。「あるある〜」的なものを取りあげていこう。今回は「切り返しのひとこと」(ツッコミの言葉など)も伝授。なにかと役立つはずだ。
文・写真:ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年3月10日号
■自動車ディーラーマン編
クルマ業界の常套句を業種や状況別に挙げていくが、まずは「自動車ディーラーマン」。
[常套句] ここだけの話、店長と相談して値引き額を勉強させていただきました
いきなり出ました〜。新車購入時、「もっと値引きできませんかね?」(お客)に対する、ディーラーマンの常套句。見積もりを前に値引き交渉を延々と続け、最後の最後で、切り札的にこの決まり文句を言うことが多い。
[切り返しのひとこと] 「本当にここだけの話ですか? どのお客にも言ってんじゃないの」
とツッコミを入れよう。そうすれば値引き額が上がるかも!? (ちょっとがめつすぎますか)
[常套句] この場で契約していただけたら
前項同様、これも新車購入時にディーラーマンが使う常套句だが、こちらはより“甘い蜜”的な決めゼリフ。だって「この場で契約していただけたら、ウン万円値引きをさせていただき、さらにナビもサービスします」などと言葉が続くことが多いから!
クルマ業界だけでなく家電業界など売る側がよく使う文句で、即決を迫る心理作戦の一環だろう。
[切り返しのひとこと] 「家族と相談したうえで決めたいんです」
いかにも自分には決定権がないフリを見せ、自分に有利な金額のままで後日じっくり交渉するのが得策である。家電を買う時などにも、このテは使えたりする。
[常套句] まだ新型車なので値引き額は少ないですが、今ナビのキャンペーンをやっていまして◎万円ぶんお得です
やや長い言い回しの常套句だが、“あまり値引きはできないけどとっても売りたいのよ〜!”というディーラーマンの心の叫びがにじみ出ているような言葉だ。いろんなものをパック料金にしてお得感を出す作戦。交渉時、隣にヨメさんがいたら間違いなく引っかかる常套句である。
[切り返しのひとこと] 「カーナビ使わないから、お得に感じないんスけど」
こちらはあくまで値引きが目的で、パックでのお得感はどうでもいい、ということを暗に伝えるためにこう切り返す。ディーラーマンに、まるめこまれてはいけない。
[常套句] ◎◎◎さんのところのクルマも悪くないですけどね……
ディーラーでの交渉時、他社の競合車の名前をお客が言った時の常套句。決してあしざまに競合車を言うことはないが、自社のクルマのほうがいいと暗に主張する言葉。
この微妙なニュアンス、いかにも日本人的な常套句だ。
[切り返しのひとこと] 「その競合車のお店でも同じことを言われましたよ」
この一言、ディーラーマンにはけっこう効くはず。悔しいからサービスしてくれるかもしれない。
■自動車メーカーの人編
お次は自動車メーカーの人が使う常套句。我々ベストカー編集部員はメーカーの人と接することが多いのだが、ギョーカイ的に“あるある!”という言葉を2つ取りあげよう。
[常套句] 来場されたお客様の反応を見て、市販化するかどうか今後、社内で検討させていただきます
東京モーターショーなどで、メーカーが出品する話題のコンセプトカー(いかにも市販が近そうなモデル)に対して、マスコミはメーカー広報部などに決まってこう聞く。「このクルマ、市販はしないんですか?」。それに対する自動車メーカーの人の常套句がこれ。ホント、決まってこう言うんですよね。
[切り返しのひとこと] 「そう言ってお蔵入りになったコンセプトカーは山ほどあるじゃないスか!」
編集者の心の叫びとしてこうツッコミたい。
しかし、’13年の東京モーターショー、その時コンセプトカーだったハスラーに対してもスズキ広報部の人はこの常套句を使っていたが、その約1カ月後に発売開始。ショーの時、すでに市販化は決定で、それは“隠れ蓑的な常套句”だったのかもしれない。また今年になってからは東京オートサロンで出品されたスカイラインプレミアムスポーツ、このコンセプトカーについても日産広報部の人はこの常套句を使っていた。
[常套句] それはベストカーさんが詳しいでしょ〜
新型車の試乗会などで、開発陣から次期モデルの情報を聞きだそうとした時、割って入る広報部の人の常套句。
[切り返しのひとこと] 「いやいや、メーカーさんからの情報だけが頼りですよ〜」
スクープ情報をウリにするベストカーとて、広くネタを拾わないとスクープ記事はできないわけ。ここは低姿勢での切り返し作戦に出る。メーカーさん、今後ともヨロシクね。
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