近年、国内の新車販売市場ではダントツのシェアを誇り、敵なしの一強となっているトヨタ。それには、豊富な車種ラインナップと全国6000店舗というセールスネットワークによる他社を圧倒する販売力によるものは大きい。
しかし、トヨタが売れているのは、その大きなセールスパワーによるものだけはない! 痒い所に手が届くような顧客ニーズの対応なども行っているといった、ほかにもさまざな要因が多くあるという。
強大なだけじゃない! あの手この手でいろいろと取り組んでいる “トヨタ新車販売の強み”を自動車販売事情に詳しい小林敦志氏が解説します。
文/小林敦志 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■コロナ禍でも登録乗用車のシェアは約60%と売れるトヨタ
2020年春から新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、日本国内の新車販売において、“トヨタ一強”とよく言われるようになったが、それが実際に統計数字でまざまざと裏打ちされることとなった。
2020年度(2020年4月~2021年3月)における登録乗用車の年間販売台数は249万5463台。そのなかでトヨタ(レクサス含む)の登録乗用車販売台数は148万1970台となり、トヨタ車の登録乗用車販売における割合は約60%となっている。
また、自販連(日本自動車販売協会連合会)統計全体における、2020年度締めでの登録販売車のみとなる車名(通称名)別販売台数ランキングでは、上位10車中にトヨタ車が7車も入っている。しかも、高額ミニバンとなるアルファードが10万台強販売して4位に入っている。
ヤリス、ルーミーなどコンパクトモデルもしっかり量販しながら、アルファードやハリアーなどの高収益車種も量販し、ハリアーは長期の納期遅延が続いている。
セダンとステーションワゴンメインで、今時は売りにくいカローラシリーズも年間で約11万台も販売してしまう。まさにいま新車販売業界は“トヨタ一強”となっているのである。
■強さの理由は「軽自動車を扱わないこと」!?
トヨタが新車販売で強みを見せる要因のひとつは、軽自動車販売をほとんど行っていないことが挙げられる。
“ピクシスシリーズ”というダイハツからのOEMはラインナップしているが、これはトヨタ車ユーザーのなかで、セカンドカーなどで軽自動車が欲しいという要望があった場合などでは販売するが、トヨタディーラーから積極的に販売することはまずない。
2020年度締めでの年間販売台数でも、トヨタ全体(レクサス含む)での軽自動車販売比率はわずか2.1%となっている。一方で例えばホンダの軽自動車販売比率は、登録車を抜き約54%と半数以上となっている。
軽自動車は、いまでは支払総額で200万円を超えることも珍しくないが、それでも登録車より売りやすいので、放っておくと軽自動車ばかり売るセールスマンも目立ってくることもある。
トヨタでは、軽自動車を販売しても、正式な販売実績としてはカウントせずに、中古車の紹介販売をした時と同じ扱いとしたり、軽自動車を2台販売したら1台分として実績カウントするなど、軽自動車販売に偏らないような実績評価を行うディーラーがあると聞く。
軽自動車だけでなく、販売目標の達成可否についても、単純に台数達成だけでなく、その内容も評価対象としているとのこと。例えば、ヤリスやルーミー、パッソばかりで販売実績を達成しても、マージン支給の足切り水準をクリアしていないとしてマージンを支給しないディーラーがあるというのだ。
つまり、目標台数が例えば5台ならば、アルファード2台、カローラ1台、ルーミー2台など、バランスよく販売することで一定以上の粗利確保をすることも、マージン支給に際して評価されるというのである。
軽自動車はもともと薄利多売商品であるが、ここのところは販売競争が激化し、かなり値引きも荒れており、さらなる薄利状況となっている。次も同じメーカーのクルマを買ってもらうというリピート率も軽自動車は全体的に悪く、購入後のメンテナンスもディーラー以外で受けるケースが多い。
何が言いたいかというと、とにかく“軽自動車は儲からない”のである。
軽自動車でのヒット作であるホンダのN-BOXでは、軽自動車にしては珍しくリピート率が高いのが販売台数ランキングにおいてトップ常連の原動力となっているようだ。
しかし、軽自動車は新車販売時の利益が少ないだけでなく、メンテナンス入庫率も悪く、けっしてN-BOXがたくさん売れているから儲かっているというわけでもないのである。
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