ディーラー数だけじゃない!? 売れまくるトヨタ一強の理由には多くの秘策あり!!

■いい意味の積極さで営業マンに「馴染み客」ができる

朝早くに営業所を出て顧客を回り、夕方に戻ってくる営業マンもいる
朝早くに営業所を出て顧客を回り、夕方に戻ってくる営業マンもいる

 また、他メーカー系ディーラーのセールスマンより、自分の抱えている既納客のなかで、しっかりクルマを売り分けることができているのも強みとなっている。トヨタは既納客が「新車が欲しい」と言ってくるのを待っているのではなく、積極的に売り込んでいるのである。

 例えば定期点検で訪店し、点検が終わるのを待っているお客に乗り換え促進を行っていると聞いたことがある。

 「お客様も暇を持て余しているので、お話はよく聞いていただけます。私の経験ですと、『その条件なら』とお乗りになっているクルマの初回車検前に新車へ乗り換えていただけることも珍しくありません」とは現場のセールスマン。

 自分の管理しているお客の趣向性などを理解し、薦める車種を決め、さらに納得できる購入条件を示して、その気もなかったのに気がついたら、“新車を購入していた”というケースも珍しくない。

 このような“新車を売る”のではなく、“買ってもらう”ことは、トヨタ以外のディーラーでも行われていることだが、特にトヨタ系ディーラーセールスマンはこれを得意技としている。“売り子”ではない、真のセールスマンがトヨタ系ではいまだに目立つのである。

 あるディーラーで新車を非常に多く売る中堅セールスマンの話を聞いた。そのセールスマンは、以前にいた店舗の関係から、お得意様がやや遠い場所に多くいるとのこと。そのため、日によっては朝営業所を出て、夕方までお得意様の自宅や会社などを渡り歩いて販売促進活動をしてくるというのである。

 お客のところへ行って商売するのは、せいぜい平成中期ぐらいまでの売り方(それ以降は自宅に来ることを嫌がるお客が増えてきた)。それを令和のこの時代、特にコロナ禍の今でも平気でできてしまうというのを聞いて驚くとともに、それだけ“馴染み客”を持っていることに感心させられてしまった。

■受注生産販売の納期待ちが営業マンの余裕につながる

ヤリスクロスは今、かなりの納期遅延となっている
ヤリスクロスは今、かなりの納期遅延となっている

 さらに在庫販売に頼らないというのもトヨタならではの強み。ホンダや日産系ディーラーへ行き、購入希望車種の絞り込みを行う時は、たいてい「在庫があれば」といった話をセールスマンがしてくる。

 ホンダや日産では、ディーラーがストックしている在庫車販売(売れ残りではない)がメインなのに対し、トヨタでは原則“ジャストインタイム”で、在庫を持たない受注生産販売を原則としている(在庫販売も以前よりは目立ってきた)。

 ただ、そのため他メーカーに比べ、受注が集中したりして納期遅延となるケースも目立っている。しかし、この納期遅延が“トヨタ一強”を後押ししているのである。

 新車販売では“受注月内に登録(軽自動車は届け出)して納車”が大原則。しかし、これはいまや軽自動車でもなかなか難しくなってきている。月はじめにディーラーの在庫車を契約し、その後の新規登録に必要な書類回収がスムーズに進むなど条件が整えば別だが、たいていは早くても翌月登録となるのが一般的。

 今時は生産体制の都合や、受注の集中などにより、納期遅延(おおむね納車まで3カ月以上かかる)しているモデルが目立っている。

 例えば、トヨタならばヤリスクロスはすでに(4月上旬現在)、納車は今年11月ぐらいとかなりの納期遅延となっている。ハリアーもグレードやオプションの組み合わせ次第では納期が長期化している。

 人気量販車のルーミーもメーカーウェブサイトでの“出荷目処”では2カ月となっているので、その後の工程を考えると納期は3カ月ほどとなり、納期遅延気味となっているといえよう。

 このように、受注したのはいいが、新規登録して納車するまでに時間を要する場合は“受注残車両”として、ディーラーや直接受注したセールスマンにはいわば“貯金”のようなものとなる。

 そのため、月々の販売目標達成でも、仮に目標が6台として、そのうち3台が受注残車両のなかから当該月に登録して納車できればそれは販売実績としてカウントできる。

 あとは新規受注として3台を追いかければ目標達成となるし(販売実績は原則登録台数でカウント)、それ以上の新規受注が入れば目標以上の実績を達成したことになる。

 在庫車販売メインで常に目標販売台数をフル新規受注で追いかけるよりは、セールスマンの心理負担も軽くなり、また目標以上の販売実績も積みやすいのである。

 ましてや今は新車販売が小売りレベルではかなり好調に推移しているので、新規受注も入りやすくなっているといえる。そのため、なおさら受注残車両の存在は大きくなっているともいえよう。

 納車に時間がかかるのは購入者側からすれば、あまり歓迎すべきことではないが、契約時に納期遅延状態の説明も受けるし、気に入ったクルマだからこそ、意外にトラブルもなく待っていてもらえるとのことであった。

 納車待ちの間に下取り予定車が車検到来月を迎えてしまうといったことも珍しくない。そのような時には、ギリギリの金額で車検を受けてもらい、1年以内に同じディーラーで新車に乗り換えれば、車検にかかった費用をキャッシュバックするトヨタ系ディーラーもあると聞く。

 そのあたりはディーラーごとにしっかり対策を打っており、トラブル回避に心掛けているようである。

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