王者キャディラックの大改革!! 輸入車としての魅力溢れるアメ車の現在地

■スムーズな変速とユニークな安全装備が楽しい

パワーは過剰なほどではないがエンジンは気持ち良く回る。街中のコーナリングでも持て余すことはなかった
パワーは過剰なほどではないがエンジンは気持ち良く回る。街中のコーナリングでも持て余すことはなかった

 試乗したのはスポーツ。エンジンは4気筒としては振動が少なく、軽やかに回る。モリモリとパワーがあふれ出るというわけではないが、十分に力強い。特にスポーツモードを選ぶとエンジン音がやや獰猛な音色となり、やや引っぱり気味の変速タイミングとなる。

 10速ATと聞いて、街なかではせわしなく変速し続けてわずらわしいのではないかと心配したが、杞憂に終わった。タコメーターを見ていると確かに変速の頻度は高いが、変速ショックをほとんど感じられないので、わずらわしさはない。

 GMはトランスミッションを自社で開発する珍しいメーカーのひとつであり、早くから多段化に積極的だっただけあってうまくつくる。

 ただしギアダウンで減速しようとすると左パドルを何度も引く必要がある。キックダウンへの反応は適切で、必要とあれば躊躇なく4、5段吹っ飛ばす。

 低負荷時に2気筒を休止して燃費を稼ぐ小技ももちあわせている。カタログには燃費の記載がないが、首都高を中心に小一時間試乗した後の車載燃費計の表示は13km/Lあたりだった。悪くない。

後続車が右から接近するとシート右側が振動し、左から接近すると左側が振動するという感覚的なアラートシステムがユニークだ
後続車が右から接近するとシート右側が振動し、左から接近すると左側が振動するという感覚的なアラートシステムがユニークだ

 街なかでの試乗だったため、ハンドリングを事細かに確認することはできなかったが、首都高の曲率の高いコーナーでは気持ちよく曲がることができた。

 GMのエンジン縦置き車が用いるアルファプラットフォームは熟成されており、乗り心地のよさとハンドリングの気持ちよさを高い次元でバランスさせる。不自然な挙動がなく、荒れた舗装路もうまく振動を吸収してくれる。

 4WDはツアーモードでは40:60、スポーツでは同20:80、アイス&スノーでは50:50の前後トルク配分となる。

 全車速対応のACC、車線逸脱防止支援(車線中央維持支援はない)、リアクロストラフィックアラート、後側方からの車両接近を知らせる警告など、ADAS(先進運転支援システム)も日欧のライバルに引けを取らない内容が備わっている。

 デジタルカメラによるルームミラーも標準装備。備わるだけではなく、例えば先行車両との車間調整はスムーズだったし、右後側方から車両が接近すればシートの右半分が、左後側方から接近すればシートの左半分が振動して注意をうながすユニークなシステムもしっくりきた。

■キャディよお前もか!! ラインナップをSUVに注力

SUVタイプのXT4。国内ラインナップはセダンがCT5のみなのに対し、SUVは4車種もある
SUVタイプのXT4。国内ラインナップはセダンがCT5のみなのに対し、SUVは4車種もある

 同じ日にSUVのXT4にも試乗した。

 キャデラックと言えばなんとなくセダンを中心としたラインアップを想像するが、実際には、現在日本でのラインアップはSUVがXT4、XT5、XT6、そしてエスカレードの計4車種あるのに対し、セダンはなんとCT5のみ。時代を反映している。

 19年半ばに日本導入されたばかりのCT6というフルサイズセダンも最近までラインアップされていたのだが、「SUV中心でいく!」という全社的な大号令のもと、あえなく販売終了となった。おおらかさがあってよかったのに!

 XT4はCT5と同じエンジンを搭載するが、こちらは横置きで9速ATとの組み合わせ。4WDのみの設定。CT5に比べ最高出力は10ps低いが、最大トルクの値は同じで1.8トン弱の車重もほぼ同じなので、力強さはほとんど変わらない。

 ツーリング、スポーツ、AWD、そしてオフロードの4つのドライブモードを選択できる。ツーリングは前輪駆動で走行するモードだ。先進安全装備もCT5と同じ内容が備わる。CT5と同じ路線のシャープなスタリングだが、より有機的な曲線のLEDがヘッドランプ、リアコンビランプに配置されている。

 CT5ほどではないにせよ、同価格帯のライバルと比べて決して引けを取らない快適性が備わっていた。装備の充実度が異なる3グレードがあり、価格は570万〜670万円。

次ページは : ■国産車や他輸入車と肩を並べる大幅進化

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